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オゾン発生器・オゾン脱臭機の危険性について

オゾンとは

オゾン(O3)は、酸素(O2)の同素体です。成層圏(地上高度10 ~ 16kmから50kmの範囲)に存在するものはオゾン層と呼ばれ、大気中のオゾンの約9割を占めています。残りの約10%は、対流圏(地表から高度10 ~ 16km)に存在します。

オゾンは強い酸化力を持っているため、殺菌、ウイルスの不活化、脱臭、脱色、有害物質の酸化・分解、生物活性などに使われています。オゾンの半減期は、乾燥空気中1%(wt)濃度で約16時間ですが、水に溶けた時には不安定で短く、数十分で酸素と水に戻ります。処理後の水にも残留せず、塩素と比較して味や匂いの変化が少ないため、水道水の殺菌に、塩素消毒の代わりにオゾンが使われる国も多いです。日本やアメリカでは食品添加物としても認可されています。

オゾンは特別な条件でないと発生しないようなものではなく、一般的な会社に置いてあるようなレーザープリンターや、家や社会福祉施設に置いてあるような空気清浄機や消臭・殺菌装置などの内、高電圧や紫外線を利用したものからも発生します。

オゾンの毒性

気体としてのオゾンは、人体の呼吸器系に刺激を与えるので、濃度管理が求められています。日本産業衛生学会が出版している「産業衛生学雑誌」では、労働者の健康障害を予防するための基準として、オゾンの許容濃度を0.1ppmとしています。なお、許容濃度の定義については以下の通りです。

許容濃度とは,労働者が1日8時間,週間40時間程度,肉体的に激しくない労働強度で有害物質に曝露される場合に,当該有害物質の平均曝露濃度がこの数値以下であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響が見られないと判断される濃度である.
許容濃度等の勧告(2021年度) 産業衛生学雑誌

 

生体へのオゾンの影響は以下の表のようになると考えられています。なお、地上の空気中の濃度は0.00 ~ 0.03ppmです。(大気オゾンとその測定法

空気中濃度 影響
0.01ppm 敏感な人の嗅覚閾値
0.01 ~ 0.015ppm 正常者における嗅覚閾値
0.06ppm 慢性肺疾患患者における嗅気能に影響はない
0.1ppm 正常者にとって不快、大部分の者に鼻、咽喉の刺激
0.1 ~ 0.3ppm 喘息患者における発作回数増加
0.2 ~ 0.5ppm 3 ~ 6時間曝露で視覚低下
0.23ppm 長期間曝露労働者における慢性気管支炎有症率増大
0.4ppm 気道抵抗の上昇
0.5ppm 明らかな上気道刺激
0.6 ~ 0.8ppm 胸痛、咳、気道抵抗増加、呼吸困難、肺のガス交換低下
0.5 ~ 1.0ppm 呼吸障害、酸素消費量減少
0.8 ~ 1.7ppm 上気道の刺激症状
1.0 ~ 2.0ppm 咳啾、疲労感、頭重、上部軌道の渇き、2時間で時間肺活量の20%減少、胸痛、精神作用減退
5 ~ 10ppm 呼吸困難、肺うっ血、肺水腫、脈拍増加、体痛、麻痺、昏睡
50ppm 1時間で生命の危険
1000ppm 数分間で死亡

オゾンとは,こんな物質である

 

 

オゾンによる大気汚染

オゾンは、自然界では工場の煙や自動車の排気ガスなどに含まれる窒素酸化物や炭化水素などから「光化学オキシダント」などとして生成され、大気汚染の原因にもなっています。(ちなみに光化学オキシダントが溜まって霧状になったものを「光化学スモッグ」と言います。)

オゾン層破壊とか聞くし、オゾンは作った方が良いのではないか?」と思うかもしれませんが、成層圏のオゾンと対流圏のオゾンは別物です。一言で言うと、成層圏のオゾンは良いオゾンで、対流圏のオゾンは悪いオゾンです。
対流圏オゾンの増加─良いオゾンと悪いオゾン─|環境儀 No.67|国立環境研究所

シックハウス症候群とは

「オゾンとは」で述べたように、現代では室内でもオゾンが発生しやすく、室内のオゾン濃度の上昇が懸念されています。特に、オゾンは洗浄剤や芳香剤に含まれるテルペン類の化学物質と急速に反応し、ホルムアルデヒドなどの有害大気汚染物質を含む多くの二次汚染物質を発生させる可能性があると指摘されています。さらに、オゾンとテルペンの反応はヒドロキシルラジカルを生成し、ヒドロキシルラジカル有機物と急速に反応し、他の潜在的に有毒な大気汚染物質の生成に繋がります。
Cleaning products and air fresheners: exposure to primary and secondary air pollutants - ScienceDirect

また、洗浄剤には揮発性有機化合物(VOC)が含まれていて、オゾンと反応することによって発生したホルムアルデヒドと共に、シックハウス症候群の原因にもなっています。

シックハウスとは,「病んだ家」のことで,どのように病んでいるかと言えば,建材,家具等から発生するホルムアルデヒドや揮発性有機化合物(以下VOC)によって室内が汚染されていると言う意味で「病んでいる」家のことである.そしてそのような家の中にいる居住者に,目や喉の痛み,頭痛,倦怠感,いらいらなどの不定愁訴が起こる場合もあり,それを「シックハウス症候群」と呼んでいる.
シックハウス問題について考える

 

なお、厚生労働省が定めているホルムアルデヒドの室内濃度指針値は0.08ppmです。
・室内空気中化学物質の室内濃度指針値について(◆平成31年01月17日薬生発第117001号)

しかし、新潟大学周辺の築4年以内の学生アパート13戸を対象に、ホルムアルデヒド濃度(検知管法)などの測定を、夏季(2010年7月~9月)と冬季(同年11月下旬~12月上旬)に行った結果は以下の通りで、夏には半数の家で0.08ppmを超えていました。

【結果】家具は比較的安価でデザインや機能性が重視され、室内空気質への影響に配慮した人はほとんどいなかった。夏季におけるホルムアルデヒド濃度は、住戸の半数が指針値の0.08ppmを超え、エチルベンゼンとスチレンの指針値を超えた住戸が1戸あった。夏季において、ホルムアルデヒド濃度が高かった住戸は、生活用品の量が多く、また、室温が他の住戸に比較して高い傾向にあった。24時間換気が設置されている住戸でも、給気口が閉じているなど換気量不足が推察された。
学生アパートにおける揮発性有機化合物濃度と生活用品との関連

 

 

空気清浄機によるオゾンの発生

室内浮遊粒子等を除去する目的で様々な空気清浄機が販売されています。しかし、空気清浄機、特にコロナ放電を伴う静電式空気清浄機の中には、稼働中にオゾンが発生する機種がありますが、カタログ等にオゾンの発生についての記載の無いものが多いです。逆に、オゾンが発生、そしてオゾンによりホルムアルデヒドなどの有害大気汚染物質を含む多くの二次汚染物質が発生している状況にもかかわらず、一般家庭に向けて、オゾン発生によるデメリットを伝えず、最初に述べた殺菌・脱臭等のメリットのみを誇張し、意図的にオゾンを発生させる「オゾン発生器」「オゾン脱臭機」と呼ばれるものすら発売されており、その機能を空気清浄機に組み込んだ機種もみられます。

そこで、市販の14種類の空気清浄機(故意にオゾンを発生させる機種は含まない)を用いて、4m3のステンレス板製のチャンバー内で、空気清浄機作動時のオゾン発生量、停止後の減衰率などについての検討を行った研究があります。結果、電気集塵式やイオン式の機種の一部にオゾンの発生がみられ、最大のオゾン発生量を示す機種では、実際の室内でも一般環境基準の0.06ppmを超える濃度になることも分かりました。
空気清浄機から発生するオゾンとその室内濃度に与える要因

2015年にも、空気清浄機のホルムアルデヒドの除去性能を測定する実験が行われていますが、未使用時点で除去率が9%台となっており、効果的とは言えないです。
家庭用空気清浄機の汚染物質除去性能と室内濃度予測手法に関する研究 ホルムアルデヒドの除去性能と劣化性

空気清浄機、オゾン発生器、オゾン脱臭機の危険性が分かりましたでしょうか。以上参考になれば幸いです。併せてこちらもご覧ください!

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