Synology・QNAP・Asustor・TerraMaster・Buffalo・I-O DATA、様々なメーカーがありますが、スマホのように好みが分かれるものと違い、NASの選択肢は1個です。
最初はNASの必要性に関する記述が続きます。既に買うことを決めている方は、目次クリックでジャンプしてください。
NASとはパーソナルクラウドとも呼ばれ、Google Drive、iCloudのように、外出先から家の中のハードディスクへ、簡単にアクセスできます。買う理由として、主に以下のものが挙げられます。
メリット1:Google Driveより安い
Google Drive(Google One)の価格は以下の通りです。(2023年4月12日時点)
- 200GB…月380円、年3,800円
- 2TB…月1,300円、年13,000円
- 5TB…月3,250円、年32,500円
- 10TB…月6,500円
以前よりかなり安くなりましたが、同時にNASも安くなっています。必要な容量が2TBとして、年13,000円をずっと払い続けると考えると、やはりNASの方がおすすめです。例えば
- 2ベイ(HDDが2枚入る)のNAS(Synology DS220j)=27,682円
- 2TBのHDD (WD20EFAX (WD Red) ) 9,796円 × 2枚=19,592円
であれば合計47,274円。約3.5年で元が取れます。大は小を兼ねるで、私は思い切って4TB買いましたので、回収にかかる時間はもっと少ないです。もちろん、各メーカーそれぞれ製品保証が付いているので、それまでに壊れた場合は交換できます。
NASを使う場合、一般的にはHDDを2枚買い、RAID1(ミラーリング)という「同じデータをHDD2枚に重複して保存する設定」をします。そうすると、片方のHDDが壊れても、もう片方のHDDに全く同じデータが保存されているので、簡単に復元できます。
メリット2:Googleなどの利用規約に引っかからない
以前、こんな記事が話題になりました。
そう、Googleの利用規約に反するデータは勝手に消されてしまうのです。銀行も犯罪者の口座は凍結する場合もありますから、法律国家のサービスとしては当然かもしれません。iCloudなどの他のサービスも同じです。
他にも、様々なものが「不正行為に関するプログラム ポリシー」に挙げられています。
同意のない露骨な画像、個人情報や機密情報、露骨な性的表現、暴力、流血、著作権侵害
Abuse Program Policies and Enforcement - Google Docs Editors Help
プログラムポリシーに挙げられているだけで、該当する全ての画像・動画が消される訳ではありませんが、自動プログラムで何が消されるか分かりません。今後AIが発達し、検知が厳密になったら尚更です。
しかしNASの場合、管理しているのはあくまで自分や会社です。警察に押収でもされない限り、HDDの中身を見られたり、勝手に消されたりすることはありません。
おすすめのベイ数
それでは本題に入ります。まずベイ数は、個人利用であれば2つで問題ありません。AmazonなどでもNASと検索すると2ベイが1番多く出てきます。(AmazonのNAS一覧)
端的に、どういうRAIDを組みたいかで選べば良いと思いますが、基本
- RAID1(2つのHDDに同じデータを書き込む)
- RAID0(2つのHDDに違うデータを書き込む)
のどちらかになると思います。個人的には、RAID1をすると同時に、オフラインで普通のHDDを用意して、定期的にバックアップを取る形がベストだと考えています。
RAIDとは?|データ復旧 国内売上No.1【データ復旧.com】
商品比較表
ハードウェア比較
各メーカーの2ベイの商品の中から、真ん中くらいの価格である約2.5万円の商品をピックアップして比較してみました。ただ、QNAPは最安値の商品で3万超えていました。(右にスクロールできます)
メーカー | Synology | QNAP | TerraMaster | Asustor | Buffalo | I-O DATA |
---|---|---|---|---|---|---|
機種 | DS220j | TS-233 | F2-210 | AS1102T | LS720D0202 | HDL2-AAX2W |
CPU周波数※1 | 1.4 GHz | 2.0GHz | 1.4GHz | 1.4GHz | 不明 | 1.33GHz |
メモリ | 512 GB | 2GB | 1GB | 1GB | 不明 | 512MB |
書き込み速度※2 | 112 MB / 秒 | 103MB / 秒 | 124MB / 秒 (RAID0の時) |
270MB / 秒 (RAID1の時) |
180.9MB / 秒 (RAID1の時) |
不明 |
読み込み速度※2 | 112 MB / 秒 | 114MB / 秒 | 124MB / 秒 (RAID0の時) |
215MB / 秒 (RAID1の時) |
260.7MB / 秒 (RAID1の時) |
226.6MB/秒 |
ドライブベイ | 2 | 2 | 2 | 2 | 2(HDD内蔵) | 2(HDD内蔵) |
RJ - 45 1GbE LAN | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
USB3.0ポート | 2 | 1 | 2 | 2 | 3 | 1 |
ノイズ | 18.2 dB(A) | 16.8 dB(A) | 18.6dB(A) | 18.6dB(A) | 不明 | 不明 |
保証 | 2年 | 2年 | 2年 | 3年 | 1年 | 3年(内蔵HDDのみ1年) |
価格※3 | 27,682円 | 31,500円 | 19,990円 | 27,120円 | 26,410円 | 26,061円 |
※1…CPUは、Synology・TerraMaster・AsustorがRealtek RTD1296、QNAPがARM 4-core Cortex-A55、I-O DATAがMarvell Armada382 Dual Coreです。Buffaloは未記載
※2…SynologyがHDDによるシーケンシャルスループット (64KB) 、QNAPがWindows File Transfer (1x 1GbE)、I-O DATAがベンチマークソフトCrystalDiskMark Ver5.12(x64)を用いて、RAID0を、デフォルト設定にて行ったSeq Q32T1の測定値(テストサイズ:1GiB(約1.074GB))。ちなみに、主に大容量の動画ファイルを保存するためにストレージを使う場合、ランダムアクセスよりもシーケンシャルアクセスが多く発生します。
※3…2023年4月12日時点のAmazonでの価格です。
Synology・QNAP・TerraMaster・AsustorのNASが、HDDの無い、ケースのみの一方、バッファロー・I-O DATAのみ、HDD(1TB × 2ベイ の機種で比較)を内蔵しており、破格の安さとなっています。
ソフトウェア比較
全て家の外から簡単にアクセスできますし、動画・画像・音楽など、様々な専用アプリがあるだけでなく、Google Drive、Dropbox、Microsoft Azureなど、様々なクラウドサービスとの互換性もあります。
メーカー | Synology | QNAP | TerraMaster | Asustor |
---|---|---|---|---|
クラウドバックアップ | ○ | ○ | ○ | ○ |
簡単アクセスサービス名 | Quick Connect | my QNAP cloud | TNAS. online | EZ-Connect |
動画管理 | ○ | ○ | ○ | ○ |
写真管理 | ○ | ○ | ○ | ○ |
音楽管理 | ○ | ○ | ○ | ○ |
UIも似ています。
Synology
セキュリティが最も大事!
では、メーカーを選ぶにあたって何が最も重要か、それはセキュリティです。NASはネットワークに接続される以上、外部からの攻撃リスクがあります。
具体的にどのメーカーの製品のセキュリティが弱いのかは一般人には分からず、製品説明にも書かれていないので、ISE(Independent Security Evaluators)という、アメリカのサイバーセキュリティのコンサル会社の調査データを参照します。
今回の「SOHOpelessly Broken 2.0」では、13台のSOHOルーターとNASのセキュリティを評価し、125のCVEを発行する脆弱性を発見しました。このようなデバイスに注目したのは、ネットワークにおけるセキュリティ上の意味合いと、以前の調査以降にこれらのデバイスのセキュリティ性能にどのような改善があったのか(もしあったのなら)確認したかったからです。 (本文は英語)
SOHOpelessly Broken 2.0 - Independent Security Evaluators
レポートには、以下のような厳しいコメントも寄せられていました。
デバイスメーカーが主張するセキュリティへの関心が高まっているにもかかわらず、これらのIoTデバイスは、リモートからの搾取を防ぐための十分なセキュリティ制御を備えていません。(本文は英語)
SOHOpelessly Broken 2.0 - Independent Security Evaluators
調査結果の中から、今回取り上げたメーカーを抽出したものが以下になります。
Buffer Overflow |
Cross-Site Scripting |
Command Injection |
SQL injection |
Authentication Bypass |
Authorization Bypass |
Cross-Site Request Forgery |
File Upload Path Traversal |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Buffalo TeraStation TS5600D1206 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |||
Synology DS218j | ||||||||
TerraMaster F2-420 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ | |
Asustor AS-602T | ✓ | ✓ | ✓ | |||||
QNAP TS-870 | ✓ | ✓ | ✓ | ✓ |
SOHOpelessly Broken 2.0 - Independent Security Evaluators
何とSynologyには脆弱性が1個もありませんでした。セキュリティに関してはSynologyが最も信頼できるということになります。
脆弱性が無いのにリストに上がっている理由は、SOHOpelessly Broken 2.0 と書かれている通り、今回が1.0に次いで発表された調査結果で、前回は脆弱性があったためです。
また、SynologyとQNAPにはそれぞれ日本法人があります。こういった点からも、万が一問題があった場合に、責任を追求しやすい立場にあります。
Synology® は、日本法人設立を発表 | Synology Inc.
QNAPが日本法人設立、個人・法人向けNAS製品の国内展開強化へ -INTERNET Watch Watch
ただ、最新の報道では、2022年4月にSynologyとQNAPの2社が、同社製NAS製品などに複数の脆弱性があり、悪用されるとリモートでコードを実行される恐れがあると発表していますが、アップデートにより解消されるようです。その他にも潜在的な脆弱性を含めて公式HPで公開しています。
DSM Vulnerability Scan Results | Synology Inc.
それでも、他社より堅牢なセキュリティを備えていると考えられますし、ご存じのようにパソコンにも脆弱性は付きもので、都度パッチを充てている状態ですので、気にし過ぎる必要はないのではないかと思っています。以上、参考になれば幸いです。
Synologyの中で選ぶべきNASについては、以下のリンクを参考にしていただければと思います。