「電化製品の許容電圧範囲は+-10%だから大丈夫」なんて、簡単に考えるのは危険です。
海外旅行に行く時は、もちろん気をつけると思いますが、日本で海外のメーカーの電化製品を使う場合も注意が必要です。例えば、プラグに以下のような文言が書いてあったとします。
- 50/60Hz
- 110-230V
- 130W
これは見た通り、使える要件について書かれていますが、日本の電圧は100Vです。果たして使えるのでしょうか。230V以上は危険そうだけど、110V以下なら大丈夫?大事な問題ですから、しっかり調べていきましょう!
世界の電気事情
周波数はどの国も50Hzか60Hzで、電圧は100Vの日本から400Vのスウェーデンまで様々ですね。ちなみに単相・三相は以下のように形状が異なります。
世界の電源電圧|各国の法令・規格|製品情報 |オリエンタルモーター株式会社
Hz(ヘルツ)について
まずHzとはなんでしょうか。工業系ECサイト最大手のモノタロウのホームページに説明があったので引用します。
周波数とは、1秒間に流れる電気が変化する回数のことです。コンセントから得られる電気は、波のように大きくなったり小さくなったりを繰り返します。その1秒間における波の数(大小でワンセット)が電源周波数です。周波数は「Hz(ヘルツ)」という単位で表されます。
(略)
現在日本には、地域によって異なる「50Hz」と「60Hz」という2種類の周波数が存在しています。おおまかに、東日本が50Hz、西日本が60Hzです。静岡県の富士川と新潟県の糸魚川あたりが境目となっており、一部には混在している地区もあります。
同じ日本でも、東日本と西日本で違うというのは面白いですね。しかし、続いて以下のように説明されています。
ここで注目するべきは電化製品です。50Hzもしくは60Hzを基準として作られている電化製品を異なる周波数の状況下で使用すると、モーターの回転数が変わって性能が低下したり、過剰に働いて火災の原因となったりします。場合によっては電化製品が痛み、故障を早めてしまう可能性もあるでしょう。 オフィスの移転などで周波数の違う地域に引っ越す際には、今持っている電化製品がどの周波数で作動するのかを確認することが大切です。
とは言え、近年では50Hz・60Hzのどちらでも使用できる電化製品も増えてきました。エアコンやパソコンといった機器は、もともと周波数に関係なく使用できるほか、モーターの周波数を適切に変えて回転数を調整する「インバーター」が内蔵されている、ヘルツフリーの製品も多く登場してきています。 近年の製品であれば、動作不良を起こす心配はほとんどないでしょう。「50/60Hz」と表示されていれば、どちらの周波数でも使用可能です。
ということでした。今回の例を含め、新しい家電では「50/60Hz」と書かれている場合が殆どなので、西日本・東日本どちらでも使えます。
V(ボルト)とW(ワット)について
次に、V(ボルト)について説明します。そもそも電気とは
- 電流:アンペア(A)
電気の流れの大きさ - 電圧:ボルト(V)
電流を流す力の大きさ - 電力:ワット(W)
電気がする仕事の大きさ
で示され「電流(A) × 電圧(V) = 電力(W)」となります。
一般的なブレーカーだと20Aなので、20A×100V=合計2000Wになるまで家電を動かせます。以下のように、家電によってワット数が異なり、合計が2000Wを超えるとブレーカーが落ちます。
電気の基礎知識 - 家電情報ポケット - Panasonic
今回の例は130Wなので問題なさそうですね。かなりエコです。
しかし、電圧はこの範囲の下限を下回っています。よく「家電の許容電圧範囲は+-10%だから大丈夫」という記述が見られますが、それはブレがあってもいいだけであり、ずっと電圧が10%違う電流を許容するものではありません。各種電子機器メーカーのページにも同様の記載があります。
Q. 【FAQ0128】電源電圧がモータ定格電圧の±10%であれば使用できますか。
A.ご使用になれません。必ず銘板に記載しております電圧/周波数にてご使用ください。運転中の許容電圧変動範囲は定格電圧の±10%です。こちらは連続的に入力可能な電圧ではなく、あくまで瞬時の変動であれば運転に問題のない電圧範囲です。
定格電圧の許容範囲でご使用ください。許容範囲を超えて使用すると、安定器やランプの寿命を早めたり、点灯しない場合があります。
https://www.hitachi-gls.co.jp/lighting/pdf/handling/lighting.pdf
なので、安全に・長く使うためには、必ず指定された範囲内に変圧する必要があります。変圧しないで使って壊れた場合、原因が他にあったとしても保証を受けられない可能性があります。
もちろん、電球やスピーカー等の簡単な作りの商品であれば影響は少ないですが、精密であればあるほど、電圧等の使用条件は厳しくなっていきます。
変圧するためには、旅行でおなじみの変圧器が必要です。上記の例の場合「アップトランス」という機能を持った変圧器が必要です。文字通り
- アップトランス…電圧を上げる
- ダウントランス…電圧を下げる
- アップダウントランス…上げる&下げる
という3つに分類されます。ダウンの方がアップより簡単なので、海外で日本の家電を使うのに必要なダウントランスの方が、安価で小さいです。
アメリカ・カナダ・台湾・スペイン旅行用ダウントランス
その他の主要国旅行用ダウントランス
今回の例は110-230Vなので、アップトランスかアップダウントランスのどちらかが必要です。ただ、アップトランスだから安くて、アップダウントランスだから高いというわけでもありませんので、後者をお勧めします。アップトランスを製造している日本で主要なメーカーは以下の2社です。
カシムラ
商品名 | WT-92J (アップ) |
WT-3UJ (アップダウン) |
---|---|---|
値段(Amazon) | ¥5,530 | ¥5,600 |
入力電圧(V) | AC100 | AC100 |
出力電圧(V) | AC220~240 | AC110~130 |
容量(W) | 110W | 300W |
日章工業
商品名 | NDF-550UPU (アップ) |
SK-550U (アップダウン) |
---|---|---|
値段(Amazon) | ¥6,040 | ¥6,147 |
入力電圧(V) | AC100 | AC100 |
出力電圧(V) | AC110~130 | AC100~130 |
容量(W) | 550 | 550 |
どの国も、110V~130V、220V~240Vのどちらかの間になっているため、変圧器も上記のように2種類ありますが、近年発売されている家電は、同じ製品を世界中で売れるように、殆どが100V~240V、少しマイナーな製品が110V~240Vになっているので、2種類のどちらかの変圧器を持っていれば大丈夫です。私も110Vの物を使っています。(ホコリを防ぐため、見栄えは悪いですが、ビニールをしてます。)
しかし、同じワット数でも220~240Vの変圧器は110~130Vの倍以上の値段なので、わざわざ選ぶ必要はありません。
ちなみに、アップダウントランスの入出力を逆にする場合は、それぞれのボルト数を、そのまま逆にした値になります。どちらも問題ないのですが、カシムラの公式製品ページに以下のように記載されていました。
AC100V(日本国内)で300WまでのAC110~130V仕様の家電製品が使えます。
*連続使用(30分以上)の場合は定格容量の80%を超えないでお使いください。
*熱を発生する製品(アイロン等)やモーターの回転する製品(ドライヤー等)は消費電力の3倍以上の定格容量が必要です。
今回の例だと、熱を発する機械だった場合、130W×3倍=390W必要という点に注意します。この中で言えば、550Wまで対応しているSK-550Uが必要です。しかしSK-550Uは、重さがWT-3UJの1.5倍近くありますので、手軽に使いたい場合はWT-3UJの方がお勧めです。
熱を発する家電や複数の家電を使う可能性がある場合は、お値段も約1.5倍になりますが1100Wまで使えるSK-1100Uもお勧めします。
Amazonではアップトランスと検索すると最初に下記の商品が出てきますが、サクラチェッカーだとかなり危険視されています。大事なものなので、検索したらちゃんと企業ホームページが出てきて、サクラチェッカーでも引っ掛からない、安心できるメーカーのものを使いましょう。