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脂質の種類と1日に必要な摂取量について

脂質は、糖質・タンパク質に並ぶ三大栄養素の内の一つで、必ず摂取する必要があります。今回はそんな脂質にどのような種類があり、それらをどのように摂取すれば良いのかを、厚生労働省の資料を中心に説明します。脂質は種類が多く、その分引用する文量も増えてしまったため、引用部に関しては太字・アンダーラインの部分だけを読み、表を見ていただければ、概要を理解できるようにしています。

目次クリックでジャンプもできます。

基本事項

脂質

炭水化物、たんぱく質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつ。体内でエネルギー源として、あるいは細胞膜を構成する成分や生理活性物質として働く。

生体成分のうち、水に溶けない物質をいい、体内では水分の次に多く含まれています。炭水化物、たんぱく質と並ぶ、エネルギー産生栄養素のひとつです。中性脂肪などの単純脂質、リン脂質やリポたんぱく質などの複合脂質、脂肪酸コレステロールなどを含むステロイドなどの誘導脂質に大きく分けられます。

〜略〜

余った脂質は、中性脂肪として体内に蓄えられますが、多く摂り過ぎれば肥満を招き、生活習慣病の原因となります。
脂肪 / 脂質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

LDLコレステロール

人間の体内にある脂質のひとつです。一般に悪玉コレステロールと呼ばれています。コレステロールは「あぶら」なので、血液中に流れるために、アポタンパク質とリン脂質で覆ったリポタンパク質という粒子に変化します。このリポタンパク質の一つが、LDL(Low Density Lipoprotein:低比重リポタンパク質)で、肝臓で作られたコレステロールを身体全体へ運ぶ役割をもっています。

数値が通常の範囲であれば問題ないのですが、血液中のLDLコレステロールが増えすぎると血管壁にたまってしまいます。それは活性酸素の影響で酸化して、過酸化脂質となります。蓄積していくと血管が細くなり血栓ができて動脈硬化を進行させ、心筋梗塞狭心症脳梗塞などの動脈硬化性疾患を誘発させます。
LDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

HDL‒コレステロール

増えすぎたコレステロールを回収し、さらに血管壁にたまったコレステロールを取り除いて、肝臓へもどす働きをします。増えすぎたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が動脈硬化を促進するのとは反対に、抑制する働きがあるので善玉コレステロールといわれます。
HDLコレステロール | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

 

エネルギー比率

目標量:下限

低脂質/高炭水化物食は食後血糖値及び血中中性脂肪値を増加させ、血中 HDL‒コレステロール値を減少させる6,7)。健常人において、このような食事をしても、動脈硬化症、肥満、糖尿病が増加することを示す報告はないが、長期間にわたってこのような血中脂質プロフィールが続くと、冠動脈性心疾患のリスクが高くなる。アメリカ/カナダの食事摂取基準6)では、 〜略〜 脂肪エネルギー比率20%以上がよいとしている。

また、極端な低脂質食は脂溶性ビタミン(とくにビタミン A やビタミンE)の吸収を悪くし8)、食品中の脂質含量とたんぱく質含量との正相関のために、十分なたんぱく質の摂取が難しくなる可能性もある。脂質はエネルギー密度がもっとも高いので、摂取量が少ないとエネルギー摂取不足になりやすく、成人でも10 ~ 15%Eを摂取するのが適切であると想定されている9)。
厚生労働省

 

目標量:上限

メタ・アナリシス10)(n‒3系脂肪酸に関する研究は除く)では脂質摂取量と総死亡率との関連は認められず、アメリカ人女性の大規模コホート研究11)でも脂質摂取量と冠動脈疾患の罹患率との関連も認められていない。また、脂質摂取量とがんとの関連も十分には明らかでない。

〜略〜

しかし、肥満との関連では、脂質摂取量を減少させると体重が減少することを示すメタ・アナリシス17‒19)は多い。正常体重の人に自由摂取下で総脂質摂取量を1% E 減少させると、0.37kg の体重減少が認められている17)。脂肪エネルギー比率が高くなると、エネルギー摂取量が大きくなり、ひいては肥満、メタボリックシンドローム、さらに冠動脈疾患のリスクを増加させる。

〜略〜

平成17年及び18年国民健康・栄養調査2,3)によると、30% E は、1 ~ 29歳の50 パーセンタイル値に相当する(表1)ので、1 ~ 29歳の脂肪エネルギー比率は、30% E を目標量(上限)とした。しかし、30 歳以上の50パーセンタイル値はおおむね 25%E以下であるので、30歳以上の脂肪エネルギー比率の目標量(上限)を25%Eとした。
厚生労働省

脂質の食事摂取基準
(脂質の総エネルギーに占める割合(脂肪エネルギー比率);% エネルギー)
年齢 目安量 目標量(範囲)
0 ~ 5か月 50  
6 ~ 11か月 40  
1 ~ 29歳   20以上30未満
30歳以上   20以上25未満
妊婦(付加量) - -
授乳婦(付加量) - -

 

脂質は脂肪酸から構成されており、以降それら脂肪酸の説明と必要量についての解説が続きますが、関係性としては以下のようになっています。


「オメガ」とは?オメガ3・6・9の特徴と上手な摂り方 | Oil Style | 日清オイリオ オンラインショップ

 

 

飽和脂肪酸

飽和脂肪酸には、カプリル酸(8:0)、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)などがある。飽和脂肪酸は食品から摂取されるとともに、炭水化物やたんぱく質の中間代謝産物であるアセチル‒CoA からも合成することができる。そのため、推定平均必要量、推奨量、目安量は設定できない。飽和脂肪酸は乳製品、肉などの動物性脂肪や、ココナッツ油、ヤシ油など熱帯植物の油脂に多く含まれる。重要なエネルギー源であると同時に、摂取量が少なくても多くても、生活習慣病のリスクを高くすることが示唆されているため、目標量を設定した。
厚生労働省

 

目標量:下限

ハワイ在住の45歳以上の男性日系人を対象としたコホート研究30)では、飽和脂肪酸の摂取量が 10g / 日(3. 9% E)以下だと、総死亡率、がん死亡率、冠動脈疾患死亡率、脳卒中死亡率が急増し、10g / 日以上の約2倍になる。このため、飽和脂肪酸摂取量が4.6%E[ = (5.3 + 3.9)/ 2]より少ないと総死亡、生活習慣病のリスクが高くなる可能性があると考え、これを丸め、4.5%Eを目標量(下限)とし、18 歳以上の男女に適用した。しかし、これらの研究では動物性たんぱく質摂取量の調整はされておらず、脳出血等の罹患増加の原因は飽和脂肪酸摂取量の減少に伴う動物性たんぱく質摂取量の減少による可能性もある。このため、脳出血予防のためには、飽和脂肪酸は乳製品や肉類から摂取することが望まれる。
厚生労働省

 

目標量:上限

飽和脂肪酸摂取量が多くて問題となる主要な疾患は冠動脈疾患、肥満、糖尿病である。大規模コホート研究から、交絡変数の影響を除かない場合、飽和脂肪酸摂取量と心筋梗塞、糖尿病に関して用量依存性の関連が認められる。すなわち、飽和脂肪酸の摂取量増加が原因で心筋梗塞、糖尿病が増加するかどうかは明らかでないが、飽和脂肪酸を多く摂取する生活習慣は、心筋梗塞、糖尿病の罹患を増加することを示している。

介入研究のメタ・アナリシスは、10%E未満では LDL‒コレステロールが12%減少するのに対し、7%E未満ではより強い16%の LDL‒コレステロールの減少を認めている18)。これらの結果は、欧米での摂取量の範囲では、飽和脂肪酸の摂取量は少なければ少ないほど、心筋梗塞、糖尿病罹患が減少することが推定される。日本人での飽和脂肪酸摂取量の50パーセンタイル値は7%E前後であり、7%Eでも生活するうえで困難はないと思われる。以上の理由により、7%Eを上限値に設定した。

若年者では飽和脂肪酸摂取量と生活習慣病との関連はあまり明らかでないが、大学生のとき(22 歳)に血清総コレステロール値が高い集団で、その後 27 ~ 42 年間の循環器疾患や総死亡率が多か ったという報告48)がある。このため、18 ~ 29歳についても目標量(上限)を設定した。
厚生労働省

飽和脂肪酸の食事摂取基準(% エネルギー)
年齢 目標量(範囲)
17歳以下 -
18歳以上 4.5以上7.0未満
妊婦(付加量) -
授乳婦(付加量) -

 

飽和脂肪酸は、繋がる炭素の数でによって、短鎖脂肪酸・中鎖脂肪酸・長鎖脂肪酸に分けられ、中鎖脂肪酸の中には、「オクタン酸(慣用名:カプリル酸)」「デカン酸(慣用名:カプリン酸)」があります。これらを含む食用油は、ココナッツ油など単体の素材から抽出されたものでも販売されていますが、それらをブレンドし、MCT(Medium Chain Triglyceride)オイルという名称でも広く販売されています。

MCTオイルは、 一般的な植物油であるLCTオイル(長鎖脂肪酸油)に比べて、体重および脂肪量の増加を抑制することが示されています。他にも、腸内フローラの改善、エネルギー消費量の増加など、数多くのメリットが提唱されています。
Effects of Medium-Chain Triglycerides on Weight Loss and Body Composition: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
Gut Microbiota and Metabolic Health: The Potential Beneficial Effects of a Medium Chain Triglyceride Diet in Obese Individuals
Greater rise in fat oxidation with medium-chain triglyceride consumption relative to long-chain triglyceride is associated with lower initial body weight and greater loss of subcutaneous adipose tissue
Medium-Chain Triglycerides Increase Energy Expenditure and Decrease Adiposity in Overweight Men

 

ただし、炒め物や揚げ物などに使う油とは違う使い方をしますのでご注意ください。

味や匂いが少なくさっぱりした油なので、油っぽくなく、料理や飲み物にかけたり、まぜたりして使います。揚げ油や、炒め油のように使うと、一般的な油よりも低温で煙が出て、泡立ちが起こり大変危険ですのでおやめください。
日清MCT(エムシーティー)オイル&パウダー 基本の使い方&レシピ

 

一価不飽和脂肪酸(主にn-9系脂肪酸

一価不飽和脂肪酸には、ミリストオレイン酸(14:1n‒7)、パルミトオレイン酸(16:1n‒7)、オレイン酸(18:1n‒9)、エルカ酸(22:1n‒9)などがある。平成17年及び18年国民健康・栄養調査2,3)では日本人で摂取される一価不飽和脂肪酸の 88% はオレイン酸で、オレイン酸は動物性脂肪やオリーブ油などの食用調理油に多く含まれる。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取されるとともに、Δ9不飽和化酵素(desaturase)と呼ばれる2重結合を作る酵素により、飽和脂肪酸から生体内でも合成ができる。必須脂肪酸でないため、目安量は設定されない。
厚生労働省

 

目標量:下限

血中脂質を比較した欧米での多くの介入研究から、高一価不飽和脂肪酸食は、LDL‒コレステロールは増加させず(高飽和脂肪酸食では増加)、HDL‒コレステロールを減少させず(高炭水化物食では減少)、血中中性脂肪値は増加させない(高炭水化物食では増加)ことが報告されている49)。

〜略〜

飽和脂肪酸を一価または多価不飽和脂肪酸で置き換えても、血中 LDL‒コレステロールの低下量は同程度で差は認められていない51)。しかし、炭水化物を一価または多価不飽和脂肪酸で置き換えると、血中 LDL‒コレステロールの低下は、多価不飽和脂肪酸の方が一価よりも強い52)。このように代謝マーカーを測定した研究は、一価不飽和脂肪酸飽和脂肪酸や高炭水化物に対して優位性を示すが、多価不飽和脂肪酸との比較で優位性はない。

〜略〜

短期間の介入研究では、高一価不飽和脂肪酸食は高飽和脂肪酸食や高炭水化物食に比べ、疾患関連の代謝マーカーをよくする報告はあるが、長期間のコホート研究では冠動脈疾患リスクの減少を認める研究は少ない。このため、一価不飽和脂肪酸摂取量の下限値は設定しなかった。
厚生労働省

 

目標量:上限

一価不飽和脂肪酸はエネルギー制限を行わないで多量に摂取した場合、肥満のリスクになるが、脂質量を25 ~ 30%E未満に抑え、飽和脂肪酸、n‒6系脂肪酸、n‒3系脂肪酸の目安量、目標量(下限値)を摂取し、残りを一価不飽和脂肪酸として摂取すると、一価不飽和脂肪酸の摂取量は少なくとも15 ~ 20%E以下になり、過剰摂取は抑えられる。また、日本人を対象とした研究報告がなく、日本人でのリスクは明白でない。このため一価不飽和脂肪酸の上限値は設定しなかった。しかしながら、欧米の長期間のコホート研究33,34,54,55)で、多量の摂取は冠動脈疾患のリスクになることが示唆されているため、過剰摂取に注意すべきである。
厚生労働省

 

「多量の摂取は冠動脈疾患のリスクになるって書いてあるけど、動物性脂肪やオリーブ油の摂取量に注意すれば良いだけでしょ?」と思うかもしれませんが、多くの食品に使われている食用油でもあるパーム油の約40%を占めています。(更に約50%が飽和脂肪酸です。)見えない油に気をつけて、摂取しすぎないようにしましょう。

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ただ、次の項目にあるn-6系脂肪酸を多く含む大豆油、コーン油なども食用調理油として使われていますが、これらは更に次の項目にある、健康に良いとされているn-3系脂肪酸の生成を阻害します。そのため、n-6系脂肪酸を摂取するよりは、そういった作用もなく、酸化にも強く、上限値も設定されていないn-9系脂肪酸を多く含んだ摂取した方が良いです。n-9系脂肪酸は、特に紅花油(サフラワー油)、オリーブオイルに多く含まれています。

含まれている脂肪酸の内訳
名前 n-9系脂肪酸(%) n-6系脂肪酸(%) n-3系脂肪酸(%)
紅花油(サフラワー油) 約75% 約13% 約1%
オリーブオイル 約71% 約10% 約1%
菜種油(キャノーラ油) 約62% 約18% 約7%
米油 約39% 約33% 約2%

 

n‒6系脂肪酸

n-6系脂肪酸を多く含む油の例の中にサフラワー油が含まれていますが、先ほどの表のように、n-9系脂肪酸の方が圧倒的に多く含まれています。

n‒6系脂肪酸には、リノール酸(18:2n‒6)、γ‒リノレン酸(18:3n‒6)、アラキドン酸(20:4n‒6)などがあり、γ‒リノレン酸やアラキドン酸はリノール酸代謝産物である。日本人で摂取される n‒6系脂肪酸の 98% はリノール酸である。リノール酸は植物に多く存在し、大豆油、コーン油、サフラワー油などの食用調理油が主要な摂取源である。γ‒リノレン酸は母乳や特殊な植物(月見草など)、アラキドン酸は動物組織 (肉、卵、魚など)に含まれている。生体内では、n‒6系脂肪酸をアセチル CoA から合成することができないので経口摂取する必要がある。食事性γ‒リノレン酸やアラキドン酸の人体への影響についての研究は少ない。
厚生労働省

 

目標量:下限

日本人の脳卒中を対象とした前向きコホート内症例対照研究71)では、血清脂質中のリノール酸比が 34% の群(リノール酸摂取量でおよそ 13. 3g / 日に相当)は、22% の群(リノール酸摂取量でおよそ 9.5g / 日に相当)と比較し、脳卒中の発症のオッズ比が0.43に低下していた。しかし、n‒6系脂肪酸摂取量と脳梗塞罹患率を調べたコホート研究29)では、相関は認められていない。Nursesʼ Health Study72)で、植物油摂取量と糖尿病の罹患との間に弱い負の関係が見出されているが、植物油に含まれる脂肪酸の種類については明らかにされていない。以上のようにエビデンスが不十分なため、目標量(下限)は設定しなかった。
厚生労働省

 

目標量:上限

リノール酸摂取量の増加は、がんのリスクを増加させるのではないかという危惧があったが73)、メタ・アナリシス74)で、少なくとも、乳がん、大腸がん、前立腺がんの発症とは関連していないことが示されている。

〜略〜

Δ6不飽和化酵素リノール酸とα‒リノレン酸の両方に競合してはたらくため、リノール酸の多量摂取により、α‒リノレン酸からの EPADHA の生成が抑制される可能性があるが、EPADHA を十分に摂取していれば影響は少ないと考えられる。一方、リノール酸は一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸よりも酸化されやすく、多量に摂取した 場合(10%E以上)のリスクは十分に解明されていない6)。さらに、リノール酸は炎症を惹起する プロスタグランジンやロイコトリエン76)を生成するので、多量摂取時の安全性が危惧される。

〜略〜

人において十分な根拠がそろっているわけではないが、上記の危険性を考慮に入れ、総エネルギー摂取量の10%をn‒6系脂肪酸 (またはリノール酸)の目標量(上限)とすることにした。
厚生労働省

n‒6系脂肪酸の食事摂取基準
性別 男性 女性
年齢 目安量
(g /日)
目標量
(%エネルギー)
目安量
(g /日)
目標量
(%エネルギー)
0~5か月 4 - 4 -
6~11か月 5 - 5 -
1~2歳 5 - 5 -
3~5歳 7 - 6 -
6~7歳 8 - 7 -
8~9歳 9 - 8 -
10~11歳 10 - 9 -
12~14歳 11 - 10 -
15~17歳 13 - 11 -
18~29歳 11 10未満 9 10未満
30~49歳 10 10未満 9 10未満
50~69歳 10 10未満 8 10未満
70歳以上 8 10未満 7 10未満
妊婦(付加量) - - +1 -
授乳婦(付加量) - - ±0 -

 

最初に書かれているように、日本人で摂取される n‒6系脂肪酸の98%はリノール酸で、大豆油、コーン油などの食用調理油が主要な摂取源であるため、こちらも知らずの内に摂取しています。

身体に良い“油”の摂り方 | DHA・EPA・オメガ3 | ロート製薬 太陽笑顔fufufu

 

 

n‒3系脂肪酸

n‒3系脂肪酸には、食用調理油由来のα‒リノレン酸(18:3n‒3)と魚介類由来のエイコサペンタエン酸(EPA、20:5n‒3)、ドコサペンタエン酸(docosapentaenoic acid:DPA、22:5n‒3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n ‒3)などがある。体内に入ったα‒リノレン酸は、一部 EPADHA に変換される。α‒リノレン酸の摂取量は総 n‒3系脂肪酸の59%を占める。DHA 摂取量は EPA の 1.8倍程度でもっとも多く、DPA 摂取量は EPA の30%程度である。

〜略〜

これらの脂肪酸は生体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する78,79)。このため、目安量を設定した。さらに、n‒3系脂肪酸は、血中中性脂肪値の低下、不整脈の発生防止、血管内皮細胞の機能改善、血栓生成防止作用等いろいろな生理作用を介して生活習慣病の予防効果を示す。このため、目標量(下限)を設定した。

〜略〜

目安量に関しては、欠乏症を予防する観点で策定されていて、α‒リノレン酸と魚介類由来の n‒3系脂肪酸とを区別することは困難である。このため、α‒リノレン酸と魚介類由来の n‒3系脂肪酸の総摂取量で摂取基準を策定した。なお、疫学データでは EPADHA の摂取量を用いた研究が多いので、魚介類由来の n‒3系脂肪酸の望ましい摂取量には EPADHA の摂取量の合計値を用いた。
厚生労働省

 

目安量

n‒3系脂肪酸に欠乏症が存在するため、n‒3系脂肪酸に目安量を設定した84)。

〜略〜

平成 17 年及び 18 年国民健康・栄養調査2,3)のデータ・ベースから計算された n‒3系脂肪酸摂取量の50パーセンタイル値(表1)を1歳以上 17 歳までの目安量とした。18歳以上については、生活習慣病の一次予防を考慮した目標量を用いる。
厚生労働省

 

α‒リノレン酸の目標量:下限

α‒リノレン酸の摂取(1.8g / 日)により総死亡率が低下することが、フランス及びインドの冠動脈疾患罹患者を対象とした介入研究で報告されている87,88)。また、健常人においても、2004年に発表された Iowa Womenʼs Health Study89)ではα‒リノレン酸摂取量と総死亡とのあいだに弱い負の関連が認められている。

〜略〜

日本人でも、α‒リノレン酸による冠動脈疾患の予防効果は期待できる。このため、18 歳以上では、平成 17 年及び 18 年国民健康・栄養調査2,3)のデータ・ベースから計算されたα‒リノレン酸摂取量の50パーセンタイル値(表1)以上の摂取が望まれる。
厚生労働省

 

 

α‒リノレン酸の目標量:上限

日本人の高齢者を対象とした介入研究では、α‒リノレン酸摂取量を3g / 日、10か月間増加させ、1日の摂取量を4.8g にしても、LDL‒コレステロール、酸化 LDL の増加は認められていないうえ、その他の主要な血液検査での異常も認められていない93)。しかし、α‒リノレン酸摂取量の増加が前立腺がんのリスクになることを示す欧米での研究報告がある。

〜略〜

目標量(上限)は算定しなかったが、男性においては前立腺がんの罹患リスクのため、α‒リノレン酸の過剰摂取には注意が必要である。
厚生労働省

 

EPA 及び DHA の目標量:下限

冠動脈疾患だけでなく、脳梗塞加齢黄斑変性症に対しても予防効果(とくに EPADHA)を示す可能性が高い。アレルギー性鼻炎や骨密度、高齢者における認知に関しても よい効果があるかもしれない。がんについての効果は明らかでない。日本人では、EPA 及び DHA 量を 0.9g / 日摂取している群で有意に、非致死性の心筋梗塞罹患の減少が認められている82)。これに丸め処理を行い、18 歳以上では、1g / 日以上の EPA 及び DHA摂取量(魚で約90g / 日以上)が望まれる(表2)。
厚生労働省

 

EPA 及び DHA の目標量:上限

n‒3系脂肪酸の出血時間、血中 LDL‒コレステロール、血糖値、免疫能、過酸化脂質、PAI‒1、その他の副作用についてレビューを行ったが、日常の摂取量では問題は認められていない84)。JELIS83)においても、1.8g / 日の EPA 投与では脳出血罹患や LDL‒コレステロールの増加、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん罹患数の増加は認められていない。極端な大量摂取による健康障害の懸念はあるものの、人におけるエビデンスは十分ではない。そのため、目標量(上限)は算定しなかった。
厚生労働省

nー3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)
性別 男性 女性
年齢 目安量 目標量※1 目安量 目標量※1
0~5か月 0.9 - 0.9 -
6~11か月 0.9 - 0.9 -
1~2歳 0.9 - 0.9 -
3~5歳 1.2 - 1.2 -
6~7歳 1.6 - 1.3 -
8~9歳 1.7 - 1.5 -
10~11歳 1.8 - 1.7 -
12~14歳 2.1 - 2.1 -
15~17歳 2.5 - 2.1 -
18~29歳 - 2.1以上 - 1.8以上
30~49歳 - 2.2以上 - 1.8以上
50~69歳 - 2.4以上 - 2.1以上
70歳以上 - 2.2以上 - 1.8以上
妊婦 - - 1.9 -
授乳婦 - - 1.7 -

※1…目標量では、EPA 及び DHA を1g/日以上摂取することが望ましい。

 

α‒リノレン酸

α‒リノレン酸はアマニ油・えごま油に多く含まれています。ただし、MCTオイル同様、加熱調理には向きません。味噌汁やサラダ、ヨーグルトなどにかけて摂取します。

開封すると酸化しやすくなるので、1~2か月を目安に使い切りましょう。 

DHAEPA

 

トランス脂肪酸

工業的に水素添加を行い、不飽和脂肪酸(液状油)を飽和脂肪酸(固形油)に変えるときに、副産物として多くの種類のトランス脂肪酸が生じる。このとき生じる多くの種類のトランス脂肪酸を含む油脂を摂取すると冠動脈疾患のリスクになることがいくつかの大規模コホート研究で示されている144)。多くの種類のトランス脂肪酸の中でどのトランス脂肪酸が問題なのかはわかっていない。工業的に生産されるトランス脂肪酸含有量は各食品によって大きく異なる145)。これらのトランス脂肪酸の人体での有用性については知られていない。また、自然界に存在するトランス脂肪酸(大部分はバクセン酸)は、反芻動物の胃で微生物により生成され、乳製品、肉の中に含まれているが、冠動脈疾患のリスクにはならないことが多くの研究で示されている69,146‒148)。
厚生労働省

 

目標量

欧米の4つの大規模コホート研究31,32,69,149)から、トランス脂肪酸を多く摂取していた人では冠動脈疾患が増加することが示されている。その中の Nursesʼ Health Study31)では、最大5分位(2. 8% E)摂取群は最小5分位(1.3%E)摂取群に比べて、1.33倍リスクが増加し、その増加率はほぼ直線的である。しかし、喫煙、糖尿病、高血圧など他の主要な冠動脈疾患危険因子のオッズ比が日本人で3 ~ 8倍程度150)であることに比べると、トランス脂肪酸の冠動脈疾患リスクはかなり小さい。介入研究をまとめた総説では4% E 以上の多量のトランス脂肪酸を食品から摂取すると、LDL‒コレステロールが増加し HDL‒コレステロールが減少することが示されているが、4% E 以下では有意な変化はみられていない151)。さらに、慢性炎症との関連も示唆されている152)。トランス脂肪酸(6.7%E)を多く含む油脂を1か月間摂取すると、大豆油に比べて、血中 IL‒6、TNFα値が増加する153)。また、横断研究154)では、トランス脂肪酸摂取量(1.5 g / 日から3.7g / 日の範囲)と血中 CRP 値と正の関連が認められる。工業的に生産されるトランス脂肪酸を含む油脂の中に、炎症を生じる化学物質が含まれる可能性がある。糖尿病に関しては、トランス脂肪酸の影響を調べた3つの大規模観察研究の中で Nursesʼ Health Study155)のみが糖尿病罹患のリスクになることを示していて、他の2つの研究40,156)では関連は見出されていない。不妊や流産との正の関連が最近報告されている157,158)。がんとの関連は明らかでない159)。日本人のトランス脂肪酸摂取量(欧米に比較し少ない摂取量)の範囲で疾病罹患のリスクになるかどうかは明らかでない。しかし、欧米での研究では、トランス脂肪酸摂取量は冠動脈疾患31)、血中 CRP 値154)と用量依存性の正の関連が示され、閾値は示されていない。また、日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる160)。このため日本でも工業的に生産されるトランス脂肪酸は、すべての年齢層で、少なく摂取することが望まれる。しかし、他の脂肪酸のように摂取すべき範囲(または許容できる範囲)として表すことが困難な脂肪酸であるため、目標量としての基準策定は行わなかった。
厚生労働省

 

トランス脂肪酸は以下のようなものに含まれています。

マーガリンやファットスプレッドショートニングや、それらを原材料に使った菓子類などの食品、部分的に水素添加された油脂で調理された揚げ物などに、トランス脂肪酸を含んでいるものがあります。
食品に含まれるトランス脂肪酸の由来:農林水産省

 

 

まとめ

30歳男性なら、以下のように脂質を摂取しましょう。

以上、参考になれば幸いです。併せてこちらもご覧ください!

【タンパク質】

www.enjoy-efficient-life.com

【炭水化物(糖質)】

執筆中