シンプルに見えて価格差の大きいサーキュレーター。5千円程度のものから3万円近くするものまであります。高ければ高いほど高機能?扇風機と兼用はできる?要点を整理して、自分に合ったサーキュレーターを買いましょう!
疑問点1:高価なサーキュレーターはおすすめなのか
本題に入る前に2つの疑問点について述べます。
皆さんご存じの通り、サーキュレーターは性能の差が出にくい、コモディティー化が進んでいる電化製品の代表格です。お金を積めば積むほど強く、かつ、静かになるかというとそうではありません。
関係する論文を探したところ、確かに羽の溝の掘り方で、1回転あたりの前に送り出される風量が変わる、という実験結果になったレポートはありました。
特定の領域の効率では、オモテ面に前縁部と後縁部からの距離の比が1 : 3になるように幅2mm×深さ0.7mmの溝を掘ったF3:1で32%、ウラ面に前縁部と後縁部からの距離の比が3 : 1になるように幅2mm×深さ0.7mmの溝を掘ったB3:1で21%の効率上昇を達成した。
ファンプロペラの効率アップー風を変えるシンプルな表面加工ー
しかし、そんな僅かな効率のために最新の研究で開発された羽を備えたサーキュレーターを数万も出して買うより、普通のサーキュレーターを買う方がよっぽど節約になると思います。
疑問点2:羽の騒音に差は出るのか
「空調用プロペラファンの騒音低減」という論文で、騒音を減らす羽の構造が示されていますが、それでも4dBしか変わりませんでした。つまり、騒音の大小は主に風量に比例し「このメーカーのサーキュレーターは、強風にしても静か!」ということは起こらないと考えています。
空調用前傾タイププロペラファンについて騒音低減を検討し、次の結果を得た。
(1)等厚ファンについて、ボス部を中心に半径方向に翼形を分布させることによ3dB(A)の騒音低減効果を得た。翼形化による流れの改善は、前縁剥離の低減とボス部付近の剥離の低減による半径方向翼負荷の均一化である。
(2)ベルマウス形状はファンの空力・騒音特性に大きな影響を及ぼし、形状によりファンの性能をある程度コントロールできる。(1)順の羽根車との組合せにより4dB(A)の低 減を図ることができた。
空調用プロペラファンの騒音低減
「メーカーによって騒音の大きさが違う」と述べているメディアもありますが、ジェット機ならともかくサーキュレーター程度の弱い出力で、同じ風量にも関わらず測定結果に4dBを大きく上回る差があった場合、測定位置が統一されていないか、特定のメーカーに対する配慮があるのではないかと考えています。
以上のことから、風量の違いで騒音の大きさに差が出ることはあっても、メーカーによって騒音の大きさに差が出るとは考えません。
モーター
ここから本題です。
まずはモーターについて、モーターの特性は以下のようになっています。なお、昔はACモーターの方が寿命が長かったですが、ブラシレスDCモーターが誕生してから同じくらいになりました。
DCモーター | ACモーター | |
---|---|---|
メリット | ・省エネ ・細かい風量調整 |
・価格が安い |
デメリット | ・価格が高い | ・消費電力が大きい ・細かい風量調整ができない |
しかし、価格.comなどで検索しても分かる通り、他の機能やブランディング、在庫状況などによる価格差も大きいため、安い順に並べてもACモーターのものが全て先に出てくるということはありません。
そもそも私は、風量も弱・中・強の3種類あれば良いと考えていて、むしろ種類が多いと切り替える時の操作回数が増えるため不便です。よって、当ブログでは風量が3段階のもののみを紹介します。
電気代の差については、元々サーキュレーター自体の消費電力が小さく、仮にDCモーターのサーキュレーターが25W、ACモーターのサーキュレーターが35Wだと仮定しても、24時間付けっぱなしで6円程度しか差がつきません。サーキュレーターを買うときは、本体価格と電気代のバランスを意識しましょう。
羽の形状
サーキュレーターと扇風機の構造上の違いはここに現れます。サーキュレーターが狭く遠くに風を飛ばす一方で、扇風機は広く近い範囲に風を飛ばす構造になっています。このように、扇風機とサーキュレーターは正反対の性質を持つので、兼用はできません。
扇風機用ブラシレスDCモータ+ファンユニット | 日本電産株式会社
羽の枚数
一般的には3枚羽タイプ、最近は5枚羽タイプものも出てきていますが、同じ形状であれば3枚羽は静か、5枚羽は騒音が大きく、同じ出力のモーターであれば、3枚羽は強い風、5枚羽はやわらかい風に感じます。扇風機と違い、人に向けて付けるものでは無いので、静かで強い3枚羽タイプをおすすめします。
【扇風機】5枚羽根と7枚羽根について - 扇風機/天井扇(シーリングファン) - Panasonic
ちなみに、扇風機で例えると、一般的に5 ~ 7枚羽の扇風機が販売されている一方で、広い場所での使用を想定した工業用の扇風機は、風の強い3 ~ 4枚羽のものが主流です。(画像は工業用の扇風機)
羽の大きさ
幅で言うと25 ~ 35cm程度のものまでありますが、メーカーによって様々です。
風量
風量は「通過する面積 × 風速」によって求められ、m3/minで表されます。メーカーによっては公開しているところもありますが、多くはありません。公開していない場合、風速はもっと公開していないでしょうから、面積、つまり羽の大きさを目安にしてください。中には目安とする畳数を掲載しているメーカーもあります。
首振り
最後に効果的な使い方に関して述べます。最近では、扇風機のように首を振るサーキュレーターも販売されています。「空気を循環させるにはこちらの方が良いのでは?」と、感覚的に判断しそうですが、工学院大学工学部の伊藤慎一郎教授によると、首振りにすると風が分散し、部屋全体を巡るほどの流れにならず、固定でつける方が、 室内にまろやかな流れを生み出し、均一な温度になるということでした。
冷房の時だけでなく暖房の時でも置き方は同じで、天井に向けてやや上向きにして、首は振らずにサーキュレーターを付けます。確かに暖まった空気は上に行きますが、空気の流れを部屋の斜め下から天井に当てることで、上に留まっている暖かい空気を下に押し出すことができます。結果、部屋全体が暖かくなります。
その他の機能
温度センサー、人感センサーなどは、当ブログでは重要性が低いと考え、割愛します。センサーに関してはむしろ、電源を入れると同時にセンサーがオンになるタイプだと、暑いけど風力を弱くしたい場合や人がいないけど風力を強くしたい場合などに、いちいちセンサーをオフにしないといけないので、勝手に風力を変えない「センサーが無いサーキュレーター」の方が助かります。
商品比較表
ということで当ブログでは、
- 風量調整が3段階
- 3枚羽
- 自動首振り無し
- 背が低い商品
- 10,000円以下
のサーキュレーターに絞って比較したいと思います。(右にスクロールできます。)
メーカー | アイリスオーヤマ | アイリスオーヤマ | ツインバード |
---|---|---|---|
型番 | PCF-MKM15N | PCF-MKM18N | KJ-D994 |
モーター | ACモーター | ACモーター | ACモーター |
適応畳数 | 8畳 | 14畳 | ー |
風量切替 | 3段階 | 3段階 | 3段階 |
縦の角度調整 | 約360° | 約360° | 約0 ~ 90°(5段階) |
寸法 | 幅252 × 奥行184 × 高さ256mm | 幅278 × 奥行214 × 高さ293mm | 幅280 × 奥行160 × 高さ280mm |
重さ | 1.1kg | 1.5kg | 約1.7kg |
消費電力 | 28W(50Hz), 27W(60Hz) | 33W(50Hz), 28W(60Hz) | 36W(50Hz), 34W(60Hz) |
値段 | 2,380円 | 2,388円 | 4,380円 |
※1…2024年9月15日時点のAmazonでの価格です。
コモディティ化が進んでメーカー間での差別化が難しいですが、機能性で言えば、他のメーカーが0 ~ 90°の段階性での角度調整しか出来ない一方で、アイリスオーヤマは360°自由に調整できます。加えて最軽量・最安値なのでおすすめです。
結果、部屋の大きさに合わせて、8畳用のPCF-MKM15Nか、14畳用のPCF-MKM18Nを選べば間違い無いと思います。
以上、参考になれば幸いです。