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EAA・BCAA・HMBを、プロテインと併用する必要が無い理由を説明します

タンパク質、EAA、BCAA、HMBの関係

基本から説明します。まず、生体乾燥重量(体から水分を除いた時の重さ)の約半分がタンパク質です。

全ての動物および植物の細胞を構成する主要な成分であり、生体乾燥重量の約50%を占めます。筋肉・臓器・皮膚・毛髪などの体構成成分、ホルモン・酵素・抗体などの体調節機能成分、豆・卵・肉・魚などの食品成分として重要であり、生命の維持に欠くことができないものです。
たんぱく質 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

タンパク質は、20種類のアミノ酸からできています。

エネルギー産生栄養素のひとつであるたんぱく質を構成する、20種類の有機化合物のこと。ひとつでも欠けるとたんぱく質を合成することができません。

〜略〜

20種類のアミノ酸のうち、人や動物が体内で作ることのできない9種類を必須アミノ酸、体内で糖質や脂質から作り出すことのできる11種類を非必須アミノ酸と呼んでいます。

アミノ酸 | e-ヘルスネット(厚生労働省)

 

必須アミノ酸は英語でEssential amino acids、略してEAAとも呼ばれています。必須アミノ酸の中で特に重要だと言われているのが分岐鎖アミノ酸、いわゆるBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)です。

BCAAはタンパク質の構成成分として15 ~ 20%含まれており,多くのBCAAは骨格筋などのタンパク質として体内に保有されている.

〜略〜

特にロイシンは,mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を介してタンパク質の合成(翻訳)を促進すると同時に分解(オートファジー)を抑制することが明らかにされている.
分岐鎖アミノ酸の分解制御機構とその重要性について

 

つまり、EAAの中にBCAAが含まれています。これらと並列して語られるHMBは、BCAAの中の一つ「ロイシン」の代謝物で、摂取したロイシンの5%分生成されます。

HMB(3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート)は、必須アミノ酸であるロイシンの代謝産物です。食事によるロイシンの摂取により体内で生成される成分で、筋肉の合成促進、筋肉の分解抑制、筋肉細胞膜への成分の供給源として働くことが知られています。

小林HMBCa | 小林香料株式会社

 

 

HMBについての研究

このHMBの効果について、20 ~ 40歳の男性39名と女性36名を、1日にHMB3.0g摂取する人としない人に分けて、全員に週3回、4週間のレジスタンストレーニングを行わせた実験があります。

結果、HMBを摂取した人達は、しなかった人達よりも上肢筋力の増加が大きくなりました(HMB有:7.5 ± 0.6 kg、HMB無:5.2 ± 0.6 kg)。また、HMBを摂取した人達は、無脂肪体重を1.4 ± 0.2 kg増加させ、脂肪率を1.1 ± 0.2%減少させましたが、摂取しなかった人達は、無脂肪体重を0.9 ± 0.2 kg増加し、脂肪率を0.5 ± 0.2%減少させました。以上のことからHMBには筋肥大に効果があることが分かります。
Nutritional supplementation of the leucine metabolite β-hydroxy-β-methylbutyrate (hmb) during resistance training - ScienceDirect

それでは、どれくらいの量のHMBを摂取する必要があるのでしょうか。トレーニングを受けていない大学生男性37名を、トレーニング中にHMBを摂取しない人、体重1kgにつき38mgを摂取する人、体重1kgにつき76mg摂取する人に分けて、1RMの80%で週3日のトレーニングを8週間行せた実験があります。

結果、1RMの筋力や体脂肪については差はありませんでしたが、HMBを摂取したグループは、していないグループと比較して、等尺性最大トルク(関節運動を伴わない、静的な状態での力)及び各種等速性トルク(一定速度の回転運動の下での力)の値を増加させ、血漿CPK活性(筋肉にエネルギーを貯める時に働く酵素。運動強度が高くなるほど高くなる。)を減少させました。そして、38mgのHMBを摂取した人が最もFFM(Fat free mass。除脂肪体重)を増加させました(76mgの人を上回った理由は不明)。以上のことから、体重1kgにつき38mg以上のHMBは、筋力または除脂肪体重の増加を促進しないと結論付けられました。
Beta-hydroxy-beta-methylbutyrate ingestion, Part I: effects on strength and fat free mass.

体重1kgにつき38mgは、体重60kgで2.28gです。ただし、体重1kgにつき38mg以上は効果が無いことが分かっただけで、本当の上限値はもっと低い可能性があることをご留意ください。2.28gのHMBを生成するのに45.6gのロイシンが必要だということになりますが、他にHMBの必要量に関する論文が見当たらないことから、これ以上のことは分かりません。

BCAAについての研究

前回の記事で、ホエイ・カゼインソイプロテインの3種類の内、ホエイプロテインが最も筋タンパク質合成(MPS)速度が高いと説明しましたが、その理由として、タンパク質がどの程度速く消化されるか、あるいは、各タンパク質のロイシン含有量のわずかな違いに関連している可能性があると推測されています。
Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men

一方、運動後に

  1. ロイシン3gを含んだホエイプロテイン25gを摂取した場合
  2. 0.75gのロイシンを含んだホエイプロテイン6.25gを摂取した場合(つまり25gの1 / 4)
  3. 6.25gのホエイプロテインにロイシンの合計が3.0gになるまでロイシンを増やしたものを摂取した場合
  4. 6.25gのホエイプロテインにロイシンの合計が5.0gになるまでロイシンを増やしたものを摂取した場合
  5. 6.25gのホエイプロテインにロイシンの合計が5.0gになるまでBCAAを増やしたものを摂取した場合

を比較した実験では、5番は、4番と1番に比べ筋タンパク質合成率が低くなりました。原因として、腸から筋肉へロイシンを取り込む際に、バリン・イソロイシンが競合となり、筋タンパク質合成を促す上でロイシン単独ほど効果的ではなかったと考えられています。このことから、BCAAサプリメントは非常に人気にもかかわらず、イソロイシンとバリン(他の分岐鎖AAs)の添加は筋タンパク質合成を改善しないと推測されています。
Leucine supplementation of a low-protein mixed macronutrient beverage enhances myofibrillar protein synthesis in young men: a double-blind, randomized trial | The American Journal of Clinical Nutrition | Oxford Academic

 

 

ですが、体重60kgの人が食事で45.6gのロイシンを摂取できなかった場合でも、ロイシンだけのサプリメントは販売されておりませんので、BCAAを追加で摂取する必要があることになります。

タンパク質の内、ロイシンはどの位の割合を占めているかというと、食材にもよるのですが、小麦、大豆、卵、ホエイプロテインの順に6.8、8.0、8.8、10.9%との分析結果が出ています。
Leucine content of dietary proteins is a determinant of postprandial skeletal muscle protein synthesis in adult rats - PMC

単純計算、ホエイプロテインなら418g摂取しなければいけないことになりますが、そんなに大量に摂取することは現実的ではないため、ホエイプロテインとBCAAを併用せざるを得ないように見えます。

筋タンパク質合成には上限がある!

しかし多くの研究で、20gを超えるたんぱく質の摂取は、筋タンパク質合成に差をもたらさないという結果が出ています。
Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men | The American Journal of Clinical Nutrition | Oxford Academic
Myofibrillar muscle protein synthesis rates subsequent to a meal in response to increasing doses of whey protein at rest and after resistance exercise | The American Journal of Clinical Nutrition | Oxford Academic

筋タンパク質合成に上限があるのではないかという仮説について、Philip J AthertonらはMuscle full effectと名付けました。
Muscle full effect after oral protein: time-dependent concordance and discordance between human muscle protein synthesis and mTORC1 signaling | The American Journal of Clinical Nutrition | Oxford Academic

前々回の記事でも、体重1kgにつき1.62g以上のタンパク質、つまり体重60kgで97.2gのタンパク質摂取は効果が無いことを説明しました。

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HMB、ロイシンが筋タンパク質合成する上で重要なことは分かりましたが、マッスルフルエフェクトによる制限を考えると、本当に必要な量は、HMB2.28g、ロイシン45.6gよりももっと少ないのではないでしょうか。以上のことからも、プロテインとBCAAやHMBを併用する必要は無いと考えられます。

EAAよりプロテインがおすすめな理由

必須アミノ酸の中には、グルタミンという、免疫機能を回復する効果など様々な効果があるアミノ酸がありますが、筋肉の損傷を抑える効果もあります。冒頭で引用した通り、非必須アミノ酸は体内で作ることができるため、EAAだけ摂取すれば良いのではと思うかもしれませんが、ストレス下では、体内のグルタミンの必要量がグルタミンの十分な量を生産する人間の能力を上回る可能性があり、条件付き必須アミノ酸(conditionally essential amino acid)とも呼ばれています。
Is glutamine a conditionally essential amino acid?

グルタミンは大豆や小麦粉、肉や魚、卵やチーズなどに多く含まれていますが水や熱に弱く、お酢などの酸性食品との組み合わせにより、グルタミンの成分が壊れてしまうという特徴があるため、意識して調理しないと食事から摂取することは少し難しいです。その点プロテインならグルタミンを含んでいる商品が多いので、手軽に摂取することができます。そもそも、EAAよりプロテインの方が安い場合がほとんどなので、経済的にもプロテインをおすすめします。

またホエイプロテインの43%はEAAで構成されているという分析結果もあることからも、EAAの不足をそこまで警戒する必要は無いでしょう。
Protein content and amino acid composition of commercially available plant-based protein isolates - PMC

以上、参考になれば幸いです。

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