今や1人1つ携帯しているモバイルバッテリー。便利な反面、発火事故なども起こっていて危険なイメージも。今日はそんなモバイルバッテリーについて解説した上で、おすすめの商品を紹介したいと思います。
リチウムイオン電池の安全性
平成30年2月1日付けの通達改正により、モバイルバッテリーは電気用品安全法の規制対象となりました。以降、法令に定められた技術基準適合などの義務を届出事業者が果たした証として、PSEマークなどを商品に表示できるようになり、このPSEマーク及び定められた表示がされている電気用品でなければ販売できません。
トピックス - 電気用品安全法(METI/経済産業省)
リチウムイオン電池及び充電器の使用に関する注意(発表情報)_国民生活センター
そのため、ある程度の安全性は担保されるようになったのですが、それでもリコールされる商品が出てきているのが現実です。
リコール実施の理由
2件のリチウムイオン電池セルの破裂事故が発生し調査した結果、一部ロットの製品に発火する可能性が判明したため。
リチウムイオン電池の種類
まず、モバイルバッテリーが全てリチウムイオン電池で作られていると思っている方が多いですが、実はそうではありません。同様に使われる電池に、リチウムポリマー電池というものがあります。リチウムイオン電池と比較すると以下の特性を持っており、薄型にこだわらないのであれば、モバイルバッテリーとしてはリチウムイオン電池の方が安全です。
次にリチウムイオン電池の分類について説明します。リチウムイオン電池には、円筒型、角形、ラミネート型の3種類がありますが、角形とラミネート型は充放電サイクルを繰り返すことで膨らむ性質を持っています。
■円筒型
円筒型がもっとも低コストで、かつ同体積では最も高容量になります。外形の寸法も安定しています。ただし多数のセルを組み合わせた場合には隙間ができ、密度が小さくなります。円筒型はすべて鉄缶です。
■角型(鉄缶、アルミ缶)
角型は鉄缶とアルミ缶があり、最近は軽量化のため、アルミ缶が多くなってきました。
〜略〜
角型は充放電サイクルに伴って厚さが膨らみます。厚さ5mmの缶が100サイクルの充放電後に厚さ6mmになることもあり、セットの設計はそれを考慮に入れて、隙間を持たせておく必要があります。
■ラミネート型
ラミネート型は角型の金属缶の代わりにラミネートフィルムを用いたものですが、内部の電解液を従来の金属缶のものと同じ液体にしたものと、ゲルの中に電解液を封じ込めたポリマー風のものがあります。いずれの場合でも、ラミネート型は角型同様、またはそれ以上に充放電サイクルによって厚さが増大していきます。
リチウムイオンバッテリーなら株式会社ベイサン | 4.リチウムイオン電池の種類
ただ、メーカーも膨張を考慮に入れた設計をしており、電池が膨張したらすぐ交換しないといけないという訳ではありませんが、膨張することで、モバイルバッテリー本体に対して衝撃が加わった時に、直接リチウムイオン電池にダメージを与えてしまいます。よって、リチウムイオン電池の中でも、円筒型の電池を使っているモバイルバッテリーをおすすめします。
なぜ円筒型のリチウムイオン電池がガスで膨張しないかというと、発生したガス自体を外に出せる構造になっているためです。
[ 4/6 ] パナソニックの住宅向け「新・蓄電池ビジネス戦略」 | 蓄電/蓄エネ | スマートグリッドフォーラム
ところが、各メーカーのモバイルバッテリーの仕様や取扱説明書を見ても、何型の電池を使っているかまでは書かれていません。そもそもリチウムイオン電池かリチウムポリマー電池かすら書かれていない場合が多いです。そこで参考にしたいのが厚さです。最も広く普及している円筒型のリチウムイオン電池は「18650形」と呼ばれる大きさで、直径18mmで全長65mmです。そこで、基盤や外箱も含めて厚さ2cm、長さ8cm以下のモバイルバッテリーは円筒形のリチウムイオン電池を使っていないと仮定します。
バッテリー容量
使い方にもよりますが、500回充放電を繰り返すと寿命になると言われており、下の例では、500回の充電と放電を繰り返すと、満充電容量1,000mAhだったものが750mAhに減り、さらに700回繰り返すと600mAhに減っています。
バッテリーは劣化する!ムダな劣化を防ぐ4つのポイント(1/2) - FMVサポート : 富士通パソコン
次に、リチウムイオン電池の電圧は3.7Vなので、USBの標準電圧の5.0Vに合わせるため昇圧したり、熱として放出されたりする過程でロスが生じ、実際に充電できるのはモバイルバッテリーに書かれている容量の約60%です。新品の状態の10,000mAhのモバイルバッテリーで、iPhone 13なら3,227mAhなので約2回分、Google Pixel6なら4,614 mAhなので約1.5回分になります。重さ・寿命を考慮すると、私は10,000mAhのモバイルバッテリーをおすすめします。
急速充電
先ほども軽く触れましたが、通常のUSBの規格で供給できる電気は以下の通りです。
種類 | USB 2.0 | USB3.x |
---|---|---|
供給電圧 | 5V | 5V |
供給電流 | 900mA | 900 ~ 1,500mA |
これだと充電には遅いということで、より大きな電力を流せるように作られたUSB規格が、急速充電を可能にします。最初は様々な規格が乱立していたのですが、今では以下の2つとなっています。
最新スマホの充電も あっという間!! 「USBの最新高速充電規格」- エレコム
モバイルバッテリー、ケーブル、デバイス(スマホ、タブレット、ノートPC)がUSB Power Delivery又はQuick Chargeの規格に対応している必要がありますが、具体的にどのデバイスが対応しているかは、厳密にはメーカーでは無く機種によります。現時点での各メーカーの最新機種については以下の通りです。
機種 | PD対応 | QC対応 |
---|---|---|
AQUOS sense6 | ○ | - |
Galaxy S22 Ultra | ○ | - |
Google Pixel6 | ○ | - |
iPhone 13 | ○ | - |
OPPO Reno5 | ○ | ○ |
Xperia 5 III | ○ | - |
Zenfone 8 | ○ | ○ |
その他の機能
電池残量確認
残りどれくらい充電できるのかという情報は常に知りたい情報だと思います。
その他
ケーブル内蔵やバッテリーとプラグが一体型のもの、ワイヤレス充電などは重要性が低いと判断し、当ブログでは割愛します。
商品比較表
以上を考慮し、
- リチウムイオン電池
- 長さ8cm、厚さ2cm以上
- 急速充電対応
- 電池残量確認可
のモバイルバッテリーがおすすめとなります。容量が10,000mAhのモバイルバッテリーを比較した表が以下になります。
メーカー | Anker | Anker |
---|---|---|
型番 | PowerCore 10000 PD Redux | PowerCore Speed 10000 QC |
電池残量確認 | ○ | ○ |
PD | ○ | - |
QC | - | ○ |
大きさ | 約106 x 52 x 25 mm | 100 x 63 x 22mm |
重さ | 192g | 198g |
価格※1 | 4,490円 | - |
※1…2023年4月8日のAmazonでの価格です。
リチウムポリマー電池だったり、厚さ2cm以下だったりするケースが多く、表に載せるに至った機種はAnkerだけになってしまいました。
結果として、AnkerのPowerCore 10000 PD Reduxがおすすめです。
急速充電器もおすすめ!
USB Power Delivery対応のケーブルはモバイルバッテリーに付属していますが、充電器は別途必要です。以下の商品は2ポートあり、MacBook Airも急速充電できます。
以上、参考になれば幸いです。