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【筋トレ】筋肥大のためのトレーニング方法のまとめ

石井直方先生の日経Goodayでの連載「“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学」を集約しました。(4/4)

私の執筆は殆ど無いため広告は付けませんですが、皆さんに共有したい内容なので記事にします。

高負荷・長インターバルトレーニング

今回からは、筋肉を太く強くする上で決して避けて通れない、メカニカルストレスを与える方法を考えていきましょう。

まずオーソドックスな筋力トレーニングの場合、80%1RM(1回挙げられる重さの80%)という負荷が標準的なメカニカルストレスです。その負荷を使って十分なトレーニング量(回数やセット数)をこなすことを前提とすると、「1秒で挙げ、1秒もしくは2秒で下ろす」というリズムで繰り返すことが標準的なトレーニングのやり方といえます。セット間のインターバルは長くしすぎず、1分程度に設定するのが適切でしょう。

筋肥大のための刺激を与えることが目的であれば、この80%1RMを中心とした負荷でトレーニングをするのがベスト。ただし、メカニカルストレスを最重視したトレーニングを考えた場合には、もう1段階、刺激を高めるための工夫がいくつかあります。

カニカルストレスを高めるファクターとしては、「高い筋力発揮」と「十分な伸張性筋力の発揮」があり、そのための代表的な方法として、(1)高負荷・長インターバルトレーニング、(2)バリスティックトレーニング、(3)エキセントリックトレーニング、(4)フォーストレプストレーニングの4つが挙げられます。

〜略〜

(1)の高負荷・長インターバルトレーニングは、90~95%1RMの負荷強度を使ったトレーニングで、負荷が大きくなる分、回数は2~4回が限界になります。また、1セット終わった後、筋力が回復するまでにしばらく時間がかかるので、必然的にセット間のインターバルは3~5分と長くなります。

1セットの挙上回数が少なく、インターバルが長いので、トレーニング全体で筋肉がこなす仕事は量的に少なくなります。仮に5分のインターバルをとったとすると、1時間のトレーニングを行っても8~10セットしかこなせません。トータルの挙上回数も最大で40回ほどになるので、トレーニングのボリュームは極めて小さくなります。

ボリュームが小さいので、筋肉を太くする効果は高くありません(効果がないわけではありません)。このトレーニングの目的は筋肥大より、むしろ高重量を挙げる筋力を高めること。高い筋力発揮を継続的に行っていると神経系の抑制が低減されてくるので、筋力増強には非常に効果的です。

そのためウェイトリフターやパワーリフターにとっては、この高負荷・長インターバルトレーニングが中心的な方法になるといえます。

(2)のバリスティックトレーニングは、負荷強度とメカニカルストレスを別物として考える典型的なトレーニングで、メカニカルストレスは非常に強く、負荷強度は相対的に低いという特徴があります。

例えば、何も負荷をかけずにジャンプをする場合、床反力(床を蹴ることによって戻ってくる力)はジャンプの高さに依存しますが、そこで瞬間的に発揮される力は自分の体重の4~5倍という大きなものになります。体重70kgの人が思い切りジャンプしたとすると、地面に対して300kgもの力を発揮することになるのです。

負荷強度は自重(自分の体重)ですから、外的な負荷はゼロということになりますが、瞬間的な力発揮は300kg。通常のトレーニングであれば、発揮される力は負荷強度に相当するわけですから、230kg(300kg-体重70kg)のバーベルを担いで行うスクワットと同等の力が発揮されているということになります。

ここで重要になるのは動きだしの加速度。力=質量×加速度なので、負荷が軽くても初期の加速度が大きければ、発揮される力そのものは大きくなります。高くジャンプするためには、上向きの大きな加速度が必要です。瞬間的に大きな力を発揮できれば加速度が大きくなり、高いジャンプが可能になるということになるわけです。

瞬間的に出す力は大きいのですが、力発揮の持続時間は非常に短くなります。ジャンプする際も、地面に対して力を発揮している時間は1秒もありません。一瞬にして高い筋力が発揮され、次の瞬間にはストンと落ちる。そういう放物線を描くようなタイプの筋力発揮をするトレーニングを総称して、バリスティックトレーニングと呼びます。

これはバーベルなどを使ったウェイト・トレーニングにも応用できます。最もメジャーなものは、クリーンやスナッチのようなクイックリフトです。かつてはアーノルド・シュワルツェネッガーも筋肉に激しい刺激を与えるために、好んでバリスティックトレーニングを行っていたそうです。

一方、バリスティックトレーニングは通常のウェイト・トレーニングと比較すると、よりスポーツ動作に近いので、鍛えた筋力を実際の動作に結びつける上でも効果的です。

筋パワーを高める、高負荷・長インターバルトレーニング:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

バリスティックトレーニン

例えば、ジャンプは典型的なバリスティックトレーニング。単純にピョンピョン跳ぶだけでも立派なトレーニングになります。

また、バーベルやダンベル、ケーブルマシンを利用する場合も、目の前にある負荷を瞬間的に強く加速するようにすれば、バリスティックトレーニングになります。わかりやすい例としては、(重量挙げの)クリーンやスナッチなどが挙げられますが、ベンチスロー(バーベルを上に放り投げるように負荷を加速する。落下途中でバーベルが減速されるスミスマシンなどを利用する)、メディシンボールを使ったキャッチボールなどもバリスティックトレーニングといえます。

いずれもポイントは「負荷を持ち上げる」のではなく、「一気に加速させ、すぐに力を抜く」こと。そこに力点を置いていれば、それはバリスティックトレーニングといえます。「瞬発力トレーニング」「負荷を加速するトレーニング」といったいい方をされることもありますが、表現の仕方が違うだけで本質的には同じトレーニングといえるでしょう。

〜略〜

バリスティックトレーニングと同様のコンセプトで活用されているのが「プライオメトリックトレーニング(プライオメトリクス)」です。両者の区別は難しいのですが、プライオメトリックトレーニングにはバリスティックトレーニングの要素も入っている、と認識しておけば間違いないでしょう。

例えばベンチスローなら、負荷を強く加速させて瞬間的に力を発揮するだけでなく(これだけならバリスティックトレーニング)、上から落ちてきたシャフトを受け取るときにブレーキをかけながら筋肉を伸張させ、すかさず切り返してもう一度投げるという動作全体を指して、プライオメトリックトレーニングと呼びます。これは「伸張-短縮サイクル」と呼ばれる運動で、負荷を投げる短縮性動作(コンセントリック)の前に、負荷を受け取る伸張性動作(エキセントリック)を行うことがポイントです。

メディシンボールを使ったキャッチボールも同様で、投げるだけならバリスティックトレーニングですが、ボールを受け取って筋肉を伸張させてから投げ返すとプライオメトリックトレーニングになります。ジャンプも、しゃがんだ状態から跳ぶだけならバリスティックトレーニング。台の上から飛び降りた反動を利用して跳び上がるような動作の場合はプライオメトリックトレーニングです。

バリスティックもプライオメトリックも、外見上の負荷強度は決して高くありません。しかし、瞬間的な力発揮は非常に大きくなるので、メカニカルストレスが強いトレーニングということになります。ということは、見た目にはそれほど大きな負荷がかかっていなくても、トレーニングとしては危険を伴うということでもあります。瞬間的に大きな力がかかることで、筋肉を痛めたり、腱を断裂したりといった障害も起こりやすいといえるでしょう。

ですから、これらのトレーニングを行う際には、まず基本的な筋力トレーニングがしっかりできていることが大前提。しかも、単純に筋力がしっかりついていればOKというわけではなく、関節の構造に合った動きをしているかどうかも重要です。関節の伸展・屈曲が安定して行われない方向に動作をしたりすると、やはりケガの原因になってしまうことが考えられます。

〜略〜

バリスティックトレーニングやプライオメトリックトレーニングは、その動作の仕方からもわかるように、単純に筋力を高めるというより、筋力を実際の動作に結びつけることが目的といえます。力の発揮の仕方が問題となるので、いいかげんに行っても効果はありません。何回行ったか、何kgの負荷を持ったかではなく、動作の質が問われるのです。

しかし、このトレーニングの難しいところは、発揮された力の大きさが見えにくいという点です。バーベルを担いでいれば負荷の大きさが見た目でわかりますが、自重負荷でバリスティックトレーニングを行っている場合、瞬間的にどのくらいの力が発揮されたかを肉眼で確認することができません。

そこで重要になるのは、指導者の眼力です。その動作でしっかり力が発揮されているかどうか。あるいはバリスティックトレーニングとして適切な力発揮がされているか。わかる人はわかると思いますが、わからない人にはさっぱりわからないでしょう。運動をしている本人でさえ、自分の体のなかでどの程度の力が発揮されたのか、感覚的にはほとんどわからないと思います。

「一気に加速、すぐに力を抜く」-バリスティックトレーニングのポイント:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

エキセントリックトレーニングとフォーストレプス

今回は「エキセントリックトレーニング」と「フォーストレプス」の2つを紹介します。

エキセントリックとは、筋肉をブレーキとして使う力発揮(伸張性収縮)のことで、実際のトレーニングでいうと、バーベルやダンベルを下ろす局面のことです。同じ重さのバーベルやダンベルを使った場合、負荷を挙上するコンセントリック(短縮性収縮)よりエキセントリックのほうが、ずっとメカニカルストレスは強くなります。

同じ重さの負荷を扱っているのに、なぜメカニカルストレスが変わるのでしょうか。それはエキセントリックのときには、使われる筋線維が間引かれているからです。上げるときと下ろすときに同じ筋線維を使っていては、負荷は下りてきません。そこで、例えば上げるときに100本の筋線維を使ったとすると、下ろすときには50 本の筋線維しか使わないという現象が起こるのです。

そういう状態になると、50本の筋線維にとっては、上げるときよりも2倍の負荷がかかっていることになります。最大筋力を超える負荷で無理やり引き伸ばされるような状態になり、頑張って力を出しても負荷を支え切れず、じわじわと落ちてくるわけです。というわけで、エキセントリックの局面では、「実際に活動している筋線維」へのメカニカルストレスが大きいといえます。

〜略〜

では、エキセントリックトレーニングで筋線維をくまなく使うには、どのくらいの回数をこなす必要があるでしょうか。実は、そのあたりのことは、よくわかっていません。

例えば、80%1RM程度の負荷を下ろすとき、全体の3分の1ほどの筋線維が使われるとしましょう。やがてその3分の1の筋線維が疲労してきて、まだ使っていない筋線維を使うようになり、次から次へと元気な筋線維が動員されてくる――そんな現象が予想できますが、本当にそうなるかどうかは解明されていません。どのくらい行えばいいかという指標のないことが、エキセントリックの欠点といえるでしょう。

また、メカニカルストレスの強さが外観上わかりにくいこと、上げる動作に比べると下ろす動作は達成感が低いため、自分が頑張っている手応えが小さいといったことを欠点に挙げる人もいるかもしれません。

とはいえ、エキセントリックの刺激がトレーニング効果を高める1つの秘訣であることは確かで、25年ほど前に私の研究室で行った実験でも、相対的な負荷強度が同じであれば、エキセントリックのほうが、コンセントリックより筋肉に対する刺激が大きくなることがわかっています。ですから、十分な回復期間を設ければ筋肥大効果も大きくなりますし、むしろ手応えがなくても筋肉に微小な損傷が起こっている可能性があるので、オーバートレーニングにも注意する必要があるといえます。

〜略〜

エキセントリックを普段のトレーニングに取り入れるために、最も簡単な方法がフォーストレプスです。これはオーソドックスなトレーニングで負荷が上がらなくなった時点で、パートナーに補助をしてもらい、プラス3回ほど動作を追加するという方法。負荷を上げるときにパートナーの力を借り、そこから自分の力でブレーキをかけながら下ろします。

エキセントリックの局面では、等尺性最大筋力の1.5倍程度(1RM筋力の1.6~1.7倍程度)の力を出すことが可能です。同じ負荷なら、上げることができなくなった後も、ゆっくり下ろすことはできるわけです。フォーストレプスは現場ですぐに使えますし、オーソドックスなトレーニングだけで終わるより、はるかに強いメカニカルストレスを与えることができ、筋肥大効果も非常に高くなります。

さらにエキセントリックの局面を重視した方法に、「専門的エキセントリックトレーニング」があります。これは負荷を挙上することを最初から捨ててしまい、補助をしてもらって負荷が上がった状態にしてから、下ろす動作のみを行うというものです。

120~130%1RMの「上げられない負荷」を使い、1~2回(多くても3回)だけ頑張って下ろします。これは筋力を非常に高める刺激になるため、パワーリフティングのように挙上重量そのものが目的となる競技には向いているといえます。ただし、かなり特殊なトレーニングですし、一般の人が行うとケガをしたり、筋肉へのダメージや疲労が大きくなりすぎたりする恐れもあるので、あまり勧められません。特別な目的がない限りは、やはりフォーストレプスを活用するのがいいのではないかと思います。

ダンベルを下げる時や下り坂を走る時は、筋肉への刺激が大きくなる:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

プライオメトリックトレーニング、バリスティックトレーニングなどで筋肉を強くする効果が落ちてしまう理由は、力を出している時間が短いからです。筋力のピークが高くても、力発揮の時間が短いと、筋肉を太くする反応は起こりにくいようなのです。

さらに、筋肉を太くするには仕事(エネルギーの量)も重要と考えられます。ある重さを一定の距離上げると、仕事は重さ×距離に相当します。トレーニングでは重さ×回数を「容量」(ボリューム)と表現し、これが仕事の目安になります。

具体的な例を挙げて説明してみましょう。例えば100%1RM(やっと1回上がる重さを1回上げる)というトレーニングは、反復回数が1回なのでトレーニングの容量は単純計算すると100×1。容量の単位でいうと、1セット当たり「100パーセンテージ1RMレップ」という値になります。では、80%1RMまで落とし、8回上げた場合はどうでしょう。80×8=640なので「640パーセンテージ1RMレップス」という容量になります。重さを20%落とすことによって、刺激の強度は0.8倍に下がりますが、1セット当たりのトレーニング容量は6.4倍にもなるのです。

このように、ほんの少し強度を落とすことによってトレーニングの容量は大きく増えますが、強度を落としすぎると今度は強い力発揮という要素がダウンしてしまいます。強い力を出すということと、トレーニングのボリュームを増やすということとが、ちょうどよくマッチしたところが、70~80%1RM程度であろうと考えられます。

ということで、適切な筋力トレーニングの方法は、少し負荷を軽くし、力を発揮する時間を長くするために上げ下ろしに1~2秒間かけて、じっくり動作を繰り返しながら十分なボリュームをこなす、ということになるわけです。

筋肉を太くするための、最適なトレーニングとは?:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

ディセンディング法(ドロップセット法)、ホリスティック法

段階的に負荷を下げながらオールアウト(筋肉を限界まで使った状態のこと)に追い込んでいくディセンディング法(ドロップセット法)〜略〜を続けた結果、長期的な筋肥大効果が大きくなることも確かめています。

 ディセンディング法は、ほとんどノーインターバルで回数を重ねていくので、1セットの容量(ボリューム)も大きくなります。それによって筋肉が肥大するわけです。

 ヘビーなトレーニングを数セット行った後、最後に負荷を50%まで下げて30回程度の高回数のセットを追加するという方法をホリスティック法といいます。また、負荷が上がらなくなったところで半分の可動範囲だけで続ける方法をワン・アンド・ハーフメソッドといいます(アーノルド・シュワルツェネッガーが好んで用いたことでも知られています)。いずれも通常のトレーニングに、オールアウトまで追い込むという要素が加わるので、やはりトレーニングの容量が大きくなり、長期的な筋肥大効果も高くなります。〜略〜

 複数の種目を組み合わせる「セット法」を利用して容量を高める方法もあります。「フラッシングセット法」(この呼び方は最近あまり使われませんが)は、同系統の種目をノーインターバルで交互に続けていくやり方。例えばバーベルカールを行った後、少し負荷の軽いダンベルを使ってカールを続けます。それが終わったら、またバーベルカールに戻り、さらにダンベルカールを行います。

 複合関節動作のベンチプレスと、単関節動作のペックデックフライを交互に行うというのも、フラッシングセット法の範疇です。種目は少し変わりますが、同じ筋肉をターゲットにしているので、短時間で筋肉がオールアウトに追い込まれることになります。

筋トレの間隔を短くしたほうが筋肉は太くなる?:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

筋肉を疲労困憊に追い込めば、筋肉は太くなりやすい

加圧トレやスロトレでなくとも、筋肉が極度に疲労すると、筋肉の中の酸素環境は悪化します。トレーニングで筋肉をオールアウト(疲労困憊)にまで追い込めば、速筋線維にトレーニング効果が表われやすくなるわけです。重い負荷であっても軽い負荷であっても、オールアウトに追い込む工夫さえすれば、筋肥大は起こりやすくなるのです。〜略〜

80%1RM前後の強度を使ったトレーニングの場合、8回ほど動作を繰り返し、それを3セットも行えば筋肉をオールアウトまで追い込むことができます。したがって、強度の高いトレーニングは効率よく速筋線維を動員することができ、短時間で筋肥大効果を生み出すことができるということになります。言い方を変えると、回数の少ない楽なトレーニングで筋肥大をさせたかったら、負荷を重くする必要があるということです。その上で、フォーストレップスやディセンディング法などで容量(ボリューム)を高めれば、さらに筋肥大効果は高くなります。

一方、軽い負荷や自重トレーニングで筋肥大をさせようと考えた場合、回数を増やさなければなりません。あるいは、少ない回数でオールアウトに追い込めるような工夫を取り入れる必要があります。その分、心身共にストレスが大きくなることは否めません。

ただ、成長期にある子どもの筋力トレーニングでは、バーベルなどの大きな負荷を使わず、軽めのダンベルや自重を使った低負荷のトレーニングがメーンになると思います。それで筋肥大を促すには、どうしても高回数という要素が必要になることを指導者は覚えておいたほうがいいでしょう。昔から行われてきた、いわゆる“根性型”のトレーニングは、決して間違いではなかったということになります。

筋肉を疲労困憊に追い込めば、筋肉は太くなりやすい:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

1つの要素で筋肉が強く太くなるわけではない――ということは、単一の方法だけが正しく、ほかの方法が間違っているということもいえなくなります。

そもそも万能のトレーニングというものはなく、それぞれに長所と短所があるものです。あるタイプの刺激は強くても、別なタイプの刺激は弱いということもあります。それぞれのトレーニングの特性を理解した上で、単一の方法に依存しないということも、筋肉を効率よく鍛えるためには大切なことです。

例えば、強度を重視したトレーニングを行えば、当然ながら力学的な刺激が強くなります。あくまで強度にこだわるのであれば、ヘビーデューティートレーニング(超高負荷でゆっくり動作し、少ないセット数で追い込む)という方法もあります。

一方、量を重視したトレーニングの場合は、容量(ボリューム)が大きくなるため、代謝的な刺激が強くなります。ヘビーデューティーの対極に位置するトレーニングとしては、低負荷で徹底的に回数を増やして追い込んでいくという方法があります。

あるいは加圧トレーニングやスロートレーニングのように、負荷は軽めにして、筋肉の中の酸素環境を悪化させるという特殊な方法を利用する手もあるでしょう。これは、高負荷・低回数のトレーニングや低負荷・高回数のトレーニングよりも、身体全体に及ぼすストレスは軽減されます。〜略〜

ただ、筋肉を太くする要素がたくさんあるからといって、あらゆるものに手を出そうとすることが誰にとってもプラスになるとは限りません。取り組んでいる競技、抱えている欠点などによって、選ぶべきトレーニングはおのずと変わってくると思います。

例えば、瞬発的な能力をもった筋肉をつくるのか。それとも持久性の高い筋肉をつくるのか。目的が違えば、具体的な手法にもかなり違いが出てきます。

また、筋肉のつきやすさは個人によって多少の違いがあり、大きく分けると強度を重視したほうが発達しやすいタイプ、逆に少し強度が低くても量を増やしたほうが効果が表れやすいタイプがあると思われます。自分がどういうタイプに属しているのかを知り、トレーニングを選ぶ際の基準にしてもいいでしょう。

最近は遺伝子の研究も進んでいて、筋肉のつきやすさを判断しやすくなっています。ただ、そうした科学的な根拠に頼らなくても、ある程度トレーニングに親しんでくれば、自分がどちらのタイプなのか感覚的にわかってくるかもしれません。それを早い段階で把握することができれば、その後の成長に大きな影響を与える可能性もあると思います。

自分のタイプがわかったとして、同じタイプのトレーニングばかり続けることも推奨はできません。生物の体には「馴化」という特性があり、一定の刺激しか与えていないと身体が慣れてきてしまい、あまり反応しなくなってくるからです。いわゆる「伸び悩み」は、そんなときに起こります。

タイプ的に高強度・低回数のトレーニングが合っている人でも、馴化が起こってしまった場合は、一時的に低強度・高回数のトレーニングに変えてみるなどの工夫が必要です。

筋肉のつきやすさのタイプに応じてトレーニングを変えよう:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)

現場のトレーニングにはさまざまな方法があり、それはどんな結果を求めるかによって変わってきます。

バーベルやダンベルなどを使ったトレーニングでは、70~85%1RMがオーソドックスな負荷になりますが、それ以外の重さを使用するとしたら、大きく分けて「強度重視型」と「回数重視型」が挙げられます。

強度重視型は、絶対的な筋力を瞬間的に発揮することが目的で、90%1RM以上の負荷を使うのが一般的です。パワーリフティング、ウェイトリフティング、ラグビーなどのパワー系の競技、あるいは、そのほかのスポーツでも瞬間的な筋力発揮を求められることがあれば、強度重視型が有効です。大きな筋力を出せる筋肉を養いながら、実質的に大きな負荷に耐える身体も同時につくられていくので、競技力アップに結びつきやすいトレーニングであるといえるでしょう。

一方、回数重視型は主に30~65%1RMの負荷、もしくは自重を使い、回数を増やして追い込んでいく方法です。回数が増えると精神的にキツくなりますが、そういう経験を積むことで、ここ一番の場面で力を発揮できる能力が身に付いてくるはずです。

〜略〜

例えば格闘技のようなスポーツでは、疲労困憊(こんぱい)に陥った状態から、いかに相手を上回る力を振り絞れるかが重要になります。そのように精神的なストレスへの耐久力が問われる競技には、回数重視型がプラスになると考えられます。ただ、精神的なストレスの強いトレーニングを年中行うのは大変なので、1年のうちで時期を区切って行うようにしてもよいと 思います。

強度重視でも回数重視でもない工夫としては、加圧トレーニングやスロートレーニングがあります。これは局所的なストレスを強めることで筋肉を早く疲労させることが可能なので、体力の低い人、リハビリテーションなどに効果的です。また、短時間で無理なく筋肉を追い込むことができるので、高齢者や激しいトレーニングをしたくないという一般女性などにも向いているでしょう。

ただ、必ずしも「負荷が軽い=トレーニングが楽」というわけではないので、そこは誤解をしないようにしないといけません。それなりの筋肉をつけたいと思ったら、やはり回数を増やしてオールアウトに追い込むなどの努力が必要です。〜略〜

年代によっても、選ぶべきトレーニングは変わってくると思います。

高強度のトレーニングは、筋肉だけでなく関節や骨に及ぼす力学的ストレスも強く、成長期の選手がハードに行いすぎると、それが原因で成長痛を起こしたり、骨や関節の障害に結びついたりする危険性が懸念されます。身体が成長し切っていない選手は、低強度・高回数で追い込むトレーニングを選んだほうがいいでしょう。

強い負荷を避けなければいけないのは、まさに身長が伸びている時期。日本人の場合は10~13歳の年代が中心になると思いますが、成長期の定義には難しいものがあり、多少の個人差はあります。なかには高校生になってから急に身長が伸びる子どももいます。その時期に筋力トレーニングを行う必要が出てきた場合も、負荷そのものはなるべく軽くしたほうがいいと思います。

一方、高回数のトレーニングは、筋肉にしっかり負荷がかかる割に関節や骨へのストレスは小さくて済みます。“しごき” になってしまうほどやらせるのは問題ですが、回数を増やしていくチャレンジをさせることは、筋持久力だけでなく、心理的な持久力を高めるという観点からも大切になると思います。

回数で追い込むトレーニングをすると、代謝物受容反射などが起こり、成長ホルモンの分泌もよくなるので、さらに身長が伸びるかもしれません。

激しいトレーニングが求められるスポーツ選手でなければ、その時期にスロートレーニングに取り組んでもいいでしょう。スロートレーニングも内分泌系の働きを活性化させるので、同じく身体の成長を促進させる効果が期待できます。

ちなみにスロートレーニングは、小学生から取り入れても問題ありません。小さい頃からハードなトレーニングはできないと思いますので、朝礼前にスロースクワットを毎日10 回行う程度でもいいでしょう。それだけでも足腰の使い方が安定してくるはずです。

そして高学年になって身体が慣れてきたら、無理のない程度に少しずつ回数を増やし、筋肉の疲労感を経験させるのがよいでしょう。そうしたトレーニングを味わっておくことで、成長期後の本格的なトレーニングの下地ができ上がっていくからです。

成長期までは「低強度・高回数(あるいはスロートレーニング)」。成長期を過ぎたら「高強度・低回数(あるいはオーソドックスな中~高強度)」。中高年になったら負担の少ない「スロートレーニング」――それが成長に応じた効果的なトレーニングといえるかもしれません。

中高年の筋トレは、負担の少ない「スロートレーニング」がいい?:“筋肉博士”石井直方のやさしい筋肉学:日経Gooday(グッデイ)